ニュース 



チェチェンニュース
Vol.02 No.26 2002.08.20

ニュース目次へ
<-前号 次号->

■イワン・ルイブキンのイニシアチブと、チェチェン戦争へのロシア人の態度

<記事について>アメリカが運営しているラジオ・リバティーのロシア語放送は、8月15日にチューリッヒで行われたイワン・ルイブキン元ロシア安全保障会議書記とチェチェン共和国大統領特別代表の秘密会談を受けて、関係者の意見を聞く特別番組を組んだ。本稿は8月17日にロシア語サイト Radio Svoboda に掲載されたテキストから訳している。英語版は今の時点では公開されていない。座談会風にまとめているが、これは編集部が編集構成したものである。

キャスターは、ピョートル・ワイル。参加者は、Radio Svoboda 「コーカサス・クロニクル」責任者オレグ・クーソフ、元ロシア安全保障会議書記イワン・ルイブキン、マスハドフ大統領特使アフメド・ザカエフ、Radio Svoboda チェチェン特派員アミナ・アジモワ、同モスクワ特派員ベロニカ・ボーデ:彼女はVTzIOM(全ロシア世論調査センター)の社会政治調査部長リフ・グトコフとのインタビューも行っている。(チェチェンニュース編集部)

原文(露文):

http://www.svoboda.org/ll/caucasus/0802/ll.081702-1.asp

ピョートル・ワイル:チェチェン側の提案により、チューリッヒでザカエフ/チェチェン副首相とルイブキン/元安全保障会議書記の会談が行われました。そこでは、ルイブキン氏が最近プーチン大統領に送った、平和交渉によるチェチェン戦争終了についての公開状の内容が討議されました。今後は、その北コーカサス情勢正常化に向けたチューリッヒ交渉の内容をプーチン=マスハドフ両氏に届けるということですが、その点について、先ずオレグ・クーソフさんから。

オレグ・クーソフ( 「コーカサス・クロニクル」責任者):木曜日チューリッヒで行われたルイブキン・ザカエフ会談は数時間にわたるものでした。ルイブキン氏はザカエフ氏との対話は具体的な提案を含むものだと考えていますが、会談内容を氏がロシアのプーチン大統領にどう取り次ぐか、という問題が残っています。ルイブキン氏が強調されるのは、最近の世論調査の北コーカサスでの戦争継続をロシア国民の62%以上が望んでいないという数字です。じつは2年前には、ほぼ同様の数字が正反対の「戦争による解決を」とでていたのです。

イワン・ルイブキン(元安全保障会議書記):マスハドフ大統領の特使ザカエフ氏とは、非常に詳しくチェチェン及び周辺部で起こっているさまざまな問題に関して話し合いました。そして一つの対案を見いだしました。プーチン大統領は、しばしば次のように語っています。「われわれは民衆の声を聞き、彼らと共にあらねばならない。そうすれば正しい政治が行える。民衆との関係を誤れば共に失敗する」と。私には今日の民衆は、こう言ってるように思えるのです。「ウラジーミル・ウラジーミロビッチ(プーチン大統領に対する敬意と親しみを込めたロシア流の呼びかけ方)、この戦争はもう止めにしましょう」と。誰かにとっては、戦争は好都合なのでしょう。原油の流れ、粗製ベンジンの流れ、戦争関連でポケットが膨らむ連中には。

正常化への明快な構想が存在しているのです。正常化に向けて動いているのは何も私たちだけではありません。今日現在、多くの人々が頭を傾け、知恵を絞って危機からの脱出方法を模索しています。およそ現ロシア政府と大統領以外のみんなとすら言えるでしょう。これは全くのパラドックスではないでしょうか? プーチン大統領は近視眼的な行動の人質となり、取り巻き連中によって物事がよく見えない[食器棚に載せられた象]と化しています。しかしながら、われわれが検討した提案は、ロシア世論によって受け入れ可能なものです。スタニスラフ・イリヤソフ氏(チェチェンの親ロシア派行政府首相)が、「ルイブキンには何の交渉権限もありはしない」と言っているようですが、ここで私はもう一度言っておきます。私は、今日のロシア世論の62%の意を体した、一個の独立した政治家として、この問題に臨んでいるのです。

オレーグ・クーソフ:チェチェン(親ロシア派)政府首相スタニスラフ・イリヤソフ氏は金曜日にロシアの報道機関に対してイワン・ルイブキンとアフメド・ザカエフのイニシアチブに否定的な見解を発表して、「ルイブキンには、この状況に入り込む余地などはない」と言っています。またアフメド・ザカエフ氏は、ラジオリバティーのインタビューで「クレムリンは、チェチェンでの平和実現交渉へのチャンスをもう一回与えられた」と表現しています。

アフメド・ザカエフ(チェチェン共和国副首相):今日、すべてはウラジミル・プーチン、ロシア大統領がどうするのかにかかってかかっています。戦争を始める、あるいは終わらせるという特権は、現在、ロシア側にあるのですから。われわれが昨日討論した提案は、ロシア国家とチェチェン人民双方の利害を考慮に入れたものです。

オレグ・クーソフ:あなたには、あなたの交渉相手が、その意見をロシア指導部に取りつげるとお考えですか?

アフメド・ザカエフ:イワン・ペトロビッチ(ルイブキン)は、政界では新米ではありません。経験豊かな政治家であり指導者です。私が思うに、氏のようにロシア国家の真の利益を擁護できる人物は、そうはいないでしょう。彼がプーチンと会って説得できるかどうかは、イワン・ペトロビッチ・ルイブキンの論拠を聞いて理解しようとするかどうか、対談者(プーチン大統領)自身にかかっていると思います。イリヤソフについて言うなら、われわれの会談に対して否定的な見解を述べるものはなにも彼だけではないということです。カディロフ、カザンツェフ、それからトローシェフも、同じようなことを言うでしょう。これらの連中は現在進行中の戦争で利益を得ている人々だからです。ですから誰が、どんな形でチェチェンの安定化に向けた平和交渉に向かって動いても、反対してくるのは明らかです。

オレグ・クーソフ:アフメド・ザカエフ氏の言葉によれば、チェチェンの指導者アスラン・マスハドフ氏は同共和国内にあってすべてを掌握しており、いかなる時にもチェチェンの武装部隊の戦闘行為を停止させることができるということです。しかし、スイスでのアフメド・ザカエフとイワン・ルイブキン両氏の会見とほぼ時を同じくしてチェチェン、ウルスマルタン地区の戦況が急激に激しいものになりました。金曜日に向かっての夜チェチェン武装部隊が地区の村々に襲撃を掛けたのです。村人たちに対して、戦士たちはアスラン・マスハドフの策定した作戦を遂行中なのだと説明したそうです。ウルスマルタン地区を訪れたわれわれの特派員、アミナ・アジモワに聞いてみましょう。

アミナ・アジモワ(Radio Svoboda チェチェン特派員):シャラジ村を金曜日の早朝に抜け出した地元住民の目撃情報では、強力に武装したチェチェン戦士およそ80人が二手に分かれて村に忍び込んできました。正午ごろ、私はシャラジないし近隣の村で詳細情報を集めようと行ってみたのですが、シャラジ村も、隣のゲヒ・チュ村も、増派されてきた連邦軍によって完全に封鎖されていました。村には入ることも、出ることもできないと言う状況でした。われわれ取材班は独立派戦士に占領された村々に急行しようとする連邦軍の装甲車の大車列を目撃しました。

昼飯時になってタンギ村では、<既に戦士たちは撤退した、しかし別の3つの山麓の村では占拠を続けている>という噂が聞かれました。チェチェン行政府長官アフマド・カディロフ長官は、「襲われた地区の状況は正常化された」と早々と声明を出していましたが、その発表を聞いた後で、完全に封鎖されたシャラジ村を徒歩で抜け出してきた住民数名と実際に話すことができました。彼女らの印象では、入ってきた戦士たちはとてもすぐに出ていくという雰囲気ではなかった。大量の武器を携えており、村では直ちに、防御陣を固めたそうです。そして村人たちに、可能な限り村を出て避難するよう勧めました。それとこの作戦が、マスハドフの命令を厳重に守って実行されているものであり、近くさらに21の村を占拠すると声明したそうです。シャラジでは一般住民の犠牲者が出ています。

色々な情報を総合すると、16日午前の時点で10名ほどが死亡したもようです。夕刻までには犠牲者の数はもっと増えるかと思います。私はこの後、地区の中心、ウルスマルタンの東の外れに行ってみましたが、その先、ゲヒ・チュとシャラジ村方面には、ロシア軍関係者以外は通行禁止になっていました。私はロシア軍の車列が、上空の攻撃用ヘリコプターに援護されつつ、村々の方に進んでいく様子を目撃しました。ウルスマルタンの郊外では、砲声と銃撃戦の音がはっきりと聞こえていました。村々の占拠を指揮したのが誰かは、まだはっきりしていませんが、当地では野戦司令官イサ・アドゥエフの名が挙がっています。

オレグ・クーソフ:全体的に見ると武装占拠はスイスでのザカエフ=ルイブキン対談と連関すると言うよりも、アフメド・カディロフ長官の親ロシア行政府側の新憲法制定の動きなどと関連しているのではないでしょうか?マスハドフ部隊は、チェチェン行政府側が憲法を変えてみたところで、新権力には、問題解決とはならないことを見せつけようとしたのではないでしょうか?

ピョートル・ワイル:全ロシア世論調査センター(VTzIOM)の調査結果では、平和的解決の支持者が増え続けているようですが、その点をベロニカ・ボーデさんからどうぞ。

ベロニカ・ボーデ(Radio Svoboda モスクワ特派員):社会学者の指摘するところでは、第2次チェチェン戦争の大きな特徴は、第1次チェチェン戦争と違い、戦争遂行についてロシア世論の圧倒的な支持があったということです。1999年9月の時点で、全ロシア世論調査センターの調査結果では63%が「勝利まで戦争を継続する」ことに支持を示し、「チェチェン指導者との平和交渉による解決」は、23%に過ぎませんでした。同センターの政治・社会調査部責任者、リフ・グトコフ氏の見るところ、こうした好戦的な気分が持続していたのは2000年春先までであったということです。

レフ・グトコフ(VTzIOM 政治・社会調査部責任者):2000年3月は最高潮で、73%が戦争支持でした。しかしこの後、様相は変化を見せ始めます。戦争支持はまだ過半数を占めていましたが、徐々に数を減らしていきます。一方、平和交渉への支持者は19%から数を増やして50%まで上昇してきます。2001年春には、平和交渉による戦争の終結を支持する人々が過半数となりました。国民の疲労感は溜まり、兵士の犠牲者増大に対する不安感が非常に高まりました。当初約束された電撃戦は破綻し、戦争はマフィアと将軍と、双方で戦争を食い物にしている連中だけにしか興味のないものとなりました。

ベロニカ・ボーデ:9月11日の事件はチェチェン戦争へのロシア人の感情にはっきりと影響を見せました。反テロリズム・キャンペーンの中で平和交渉派はいったん、44%に下落します。ところが、10月には回復を見せ、今年3月には61%に達しました。以来、若干の微動はあるものの同じ水準を維持し続けて今日に至っています。現在、戦争継続の支持者はロシア人の29%に過ぎなくなっています。これは1999年の秋とは正反対の構図ということですが、ロシア人の気分について社会学者としてのレフ・グトコフさんはどう説明されますか?

レフ・グトコフ:大多数の人々は、戦争がパルチザン戦争になってしまい、状況が袋小路に入ってしまったから、戦争では解決の糸口がつかめない、目的を達成できないと感じているのだと考えています。戦争に疲労し、展望のなさを理解してきたということでもあります。ここには、人道主義的な気分とか、寛容さが大切だと言ったモチベーションはほとんど感じられません。チェチェン人に対する感情は、非常にアグレッシブです。それでもなお、ロシア人の多くが勝利のあり得ないこの戦争は止めるべきだと考え始めたという点が、私には興味深いところです。

ベロニカ・ボーデ:戦争への疲労感は非常に大きいと思います。過半数のロシア人、およそ55%が、もはや何らかの形でのチェチェンの独立を、仕方のないことと受け止めています。社会学者の観察するところ、ロシア人はチェチェンをロシアの政治の病患部と感じています。約70%のロシア市民はウラジーミル・プーチン大統領がこれまでにチェチェン問題を解決できなかったことに不満を抱き、65%は、今後も彼は解決できないのではないか、という不安にかられています。

<了>

ニュース目次へ
<-前号 次号->


ホーム最新ニュース週刊ニュースこのサイトについて