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チェチェンニュース
Vol.02 No.32 2002.09.17

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【和平】

■プリマコフ元首相ら、チェチェン撤退支持発言

9月前半、ロシアのさまざまな立場の政治家たちから、ロシア軍撤退を支持する発言があった。全体のトーンとしては、チェチェンとの平和的共存を求めるよりも、4年間におよぶ第二次戦争による疲弊感を漂わせるものが多い。以下は英文メディアに報じられたものから引用。

『第二の戦術を選択する時が来た。(チェチェンの)野戦司令官たちとの交渉なくして、チェチェン側に自治を下すことはできないし、地域的な安全保障も確立できないのは明白だ』 9月10日、エフゲニー・プリマコフ元首相(現ロシア商工会議所会頭)、ロッシスカヤ・ガゼータ紙への寄稿で。

http://www.themoscowtimes.com/stories/2002/09/11/011.html

『チェチェンの状況は解決に向かっているとは言いがたい。戦略的、戦術的に新しいアプローチが必要だ』 9月11日、ウラジミル・ゾーニン国務大臣がクワーシン大将によるチェチェン撤退についてのプロポーザルに対して発言。

http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/bf050e32ddf1c3eec1256c32003fd4b0?OpenDocument

『2004年の大統領選に、統一候補が立候補する方向で、野党諸党派の内密の会合が開かれた。この連合のベースになるのは<ロシアの民主基盤、連邦の地位、地方自治の確保と、チェチェン戦争の和平による解決>だ』 9月6日、右派連合のボリス・ネムツォフ党首。独立新聞のインタビューに答えて。

http://www.rferl.org/newsline/2002/09/060902.asp

『独立よりまず平和が優先です。連邦の上部はすでにチェチェン問題を連邦内の問題と見なしていません。われわれはあたらしい共存の形を見出すべきで、そのためのマスハドフ・プーチンの会談が必要なのです』 9月2日、ルスラン・ハズブラートフ元ロシア下院議長、グラスノスチ財団のインタビューに答えて。

http://www.glasnostonline.org

【人権】

■大量虐殺の跡が露見 イングーシ国境付近

9月9日付でカフカスセンターは、情報源をイングーシのロシア人権擁護組織メモリアルの支部関係者としてチェチェン・イングーシ国境付近のロシア軍駐屯地付近で、イングーシ民警が15-17名の死体を発見したと報じた。民警の捜査では、死体はいずれもチェチェン人で、拷問を加えられた跡があり、虐殺が行われたのは今年の初め頃と推定されているという。

http://www.kavkaz.org/russ/article.php?id=5266

■ロシア当局、難民キャンプの強制立ち退きを迫る

9月10日、イングーシ共和国のマルゴベク地方のアキ−ユルトにあるイマーム難民キャンプに、ロシア内務省移住局の上級職員イゴール・ユナーシェフ氏らが到着し、難民たちに対し、キャンプは2日以内に取り壊す予定なので、マルゴベクに移動して居住すること、住居はそこに用意済みと通告した。

難民たちは、このキャンプが最近、援助団体によって冬季用に準備されたばかりで、子どもたちの幼稚園がないところには移ることができないと主張した。目撃者によれば、ユナーシェフは脅しに出た。ロシア軍をよこして、強制的に退去させるというのだ。同行していたイングーシ内務省職員によれば、ユナーシェフの振る舞いは横暴だった。難民たちに対して「目に物を見せてやろう」「その口を塞がれたいか」といった物言いをした。

イマームから数人の難民が「用意済みの住居」を見に行くことになったのだが、ズライ・バシャーエヴァによると、仮設住宅には仕切りもなく、ドアも、窓もついていなかった。「とても人間が入るようなところではなかったわ」と言う。イマームの難民たちのために、最近ドイツの援助組織が設置してくれた幼稚園も捨てがたい。

これまで、バシャーエヴァは、イマームの難民の代表として、度重なる難民再登録(週ごとに行われることさえある)をやめることを要求していた。予告なく登録がされることで、その時偶然キャンプから出ていた人間が配給リストから削除されてしまうことに抗議してきていた。

http://www.prima-news.ru/eng/news/news/2002/9/11/16749.html

■サマシキ村で民間人5人が逮捕される

ルスラン・イサーエフ/9月1日、チェチェンのサマシキ村で、村人5人がロシア軍に拘束された。目撃者によると、この日早くロシア軍のヘリが飛来し、降下したロシア兵が、村人たちがまだ眠っていたにもかかわらず捜索を開始した。その結果5人の村人が拘束された。アマーエフ家から2人、マホマイエフ家から2人の兄弟、イブラギム・ムルタザリエフである。村人たちは抵抗したが、逮捕者の年老いた両親はロシア兵に殴打された。

翌日、逮捕された一人、ザイディン・マホマエフがハンカラのロシア軍基地から家に戻った。(路上で?)偶然彼をみつけたチェチェン人に連れてこられたのである。ザイディンは歩くこともできず、明らかに拷問を受けた跡があった。首筋には深い切り傷があり、ナイフによるものと思われた。

ザイディンによると、逮捕者たちはグロズヌイ近くのハンカラのロシア軍基地に連れて行かれた。ほかの4人の逮捕者は今もハンカラにいると見られる。家族たちは逮捕に至った公式の理由を今もって聞かされていない。

サマシキの人々によると、他にも6人の村人が行方不明になっている。数ヶ月前にロシア軍に連れ去られたという。村人たちの多くは彼らの生存は期待できないと思っている。

ルスラン・イサーエフ/チェチェン人ジャーナリスト

http://www.watchdog.cz/?show=000000-000008-000001-000175&lang=1

【グルジア情勢】

■パンキシ渓谷/シュワルナゼの賭け

<記事について>パンキシ渓谷へのグルジア軍・警察の派遣は当然のなりゆきだった。しかしこれを実行したことで、グルジアは深刻な不確定要素を抱え込むことにもなった。問題はこの行動が、国内の各種勢力を刺激していることである。グルジア国連協会のジャバ・デダリアニ氏の記事からは、シュワルナゼの一挙手一投足がグルジアの各地域に波紋を落としていることがよくわかる。シュワルナゼはかつてのユーゴのチトー大統領のような手腕を求められているのだろうか。現在もパンキシ情勢を巡って、ロシア政府はグルジアに対して恫喝まがいの行動を続けている。最近の情勢については次のリンクを参照。(大富)

グルジア越境攻撃も チェチェン侵入で可能性示唆(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020912-00001013-mai-int

●「政府はいつもロシアの要求に屈している」

グルジアに向けられたロシアの攻撃的な政策と、自国内の不満の増大の間で、シュワルナゼ大統領はパンキシ渓谷への警備出動を決断した。しかしこの件は彼の弱点を覆い隠そうとして実行されたものでもある。シュワルナゼにとって、ロシア軍の明白な侵略行動に手をこまねいていることはできなかった。6月29日以来、「国籍不明」の軍用機と攻撃ヘリが5回にわたってグルジア上空を侵犯。ついには8月23日には爆撃に及び、村人1人が死亡、8人が負傷した。

その上ロシアのイワノフ国防相は、公式にパンキシ渓谷にロシア軍を派遣し、チェチェン民兵を排除する権利があると主張した。「ロシア側は、グルジアの国内的な弱点と不確定な要素を操縦している」と、グルジアのシンクタンク、コーカサス平和・民主主義・開発研究所(http://www.cipdd.org/)のジア・ノディア所長は語る。グルジア国内では、ロシアの圧力に無力な自国政府に対する不満も増している。「政府はいつもロシアの要求に屈しています。ロシアの侮辱にはもう耐えられない」そう語る大学生のイラクリ・ドヴァリの意見は、グルジアの世論を反映しているようだ。

●チェチェン難民の嘆き

シュワルナゼは、ロシアに対して「グルジア領内での「狩」はよせ」と言い、もう一方で自国軍をパンキシに派遣した。8月25日、パンキシでは大規模な作戦が開始された。600人以上の内務省軍が派遣され、その外側では1500人の陸軍部隊が演習を行った。こうすることでシュワルナゼは軍の力と犯罪撲滅にかける決意を示したわけだが、この決断は一連の潜在的な危険を招きかねない。

グルジア政府軍がこの地域に入ることに地元住民は賛成しているが、その背後に隠されているのは、当惑と諦めである。「もう疲れました」と、22歳のマディナは言う。彼女はパンキシに近いアフメタの住民である。「私たちは難民で、実験用のウサギみたいなものです」。パンキシ渓谷はもともと、グルジア人やキスト人(民族的にはチェチェン人、祖先は19世紀にチェチェンから来た)、そして最近チェチェンから流入してきた難民たちの混ざり合った地域である。チェチェン民兵と疑われる人々、人数はわからないがアルカイダとつながりがあると言われる外国からのイスラム義勇兵たちは、難民のグループを隠れ蓑にしている。

ここ3年間、民兵たちはパンキシの評判を落としつづけた。誘拐、麻薬密売、武器密売、ついには警察も立ち入れない地域になった。グルジアのコバ・ナーチェマシヴィリ内相は、パンキシの警備作戦には地域社会の助力が不可欠だと見ている。何人かの専門家によると、このことはグルジア政府がチェチェンの民兵や野戦司令官に決定的な行動にはしり込みしていることを示しているという。

●国内に広がる動揺

警備作戦の開始から1週間、逮捕されたのは非グルジア人の民兵一人と、フランスのパスポートを持ったアラブ人だけである。アメリカのシンクタンク、STRATFOR(http://www.stratfor.com/)は、8月29日に「無力な作戦であり、アルカイダと地元民兵に利する結果にしかならない」と、グルジアの作戦に批判的な論文を掲載した。しかもこの軍事行動は、グルジアのほかの地域にも、警告となって響いた。グルジアからの分離を主張する南オセチアのエドゥアルド・ココエフ大統領は、グルジア軍の派遣の可能性におののいてモスクワに向かい、ロシア外務省との会談を持った。同じく分離独立を唱えるアブハジアは、8月27日に「グルジアの行動はアブハジアに対する新たな侵略行動につながる」と非難した。グルジアのサムツケ−ジャヴァケティ地区のラジカルなアルメニア人のグループ「ヴィーク」も、憂慮の念を示した。

これらの地域のどこで事態がエスカレートしても、グルジアは悲惨な事態に陥る。シュワルナゼの行動には、今のところ、(グルジアの最近の歴史では珍しいことに)広範な国民の支持が得られていることだけが救いだ。しかしそれは、パンキシ渓谷の事態をスムーズに解決することができるという前提のもとにある。成功すれば、作戦は輝かしい経歴となり、犠牲者も少ないままに手早く成果を得られるだろう。成功には、パンキシに捕らえられているといわれる誘拐事件の人質解放も含まれる。内務省筋によるとすでに人質のうちイギリス人の銀行員ピーター・シャウと、正教の神父、バシリの居場所は判明しているという。

●降雪期が緊迫の中休みに

いまのところ、ナショナリストの意見では「大統領はもっと徹底的な行動をすべきだ」となり、ジア・ノディア所長の指摘では「野党にとってむずかしい状況にある。シュワルナゼが周囲から受けているプレッシャーは国民に理解されているようだし、世論というのは政治的駆け引きに無神経だ」という。しかし、この作戦が失敗に終わった場合、またはグルジア人の犠牲者を多数出した場合、ナショナリストは今以上の力を得るだろう。

それでもシュワルナゼはこの作戦をゆっくり進めることができる。降雪期になれば、チェチェンへの通路はふさがれる。軍は春までフリーハンドになるのだ。目に見えてグルジアの成功となった場合は、グルジアは外敵にも内敵にも対応できない落第国家のイメージから、脱却することができる。国のイメージアップになり、シュワルナゼは来年の議会選にむけて強力な立場を得るだろう。

ジャバ・デダリアニ/グルジア国連協会(civil.ge)の編集者

http://www.iwpr.net/index.pl?archive/cau/cau_200209_145_1_eng.txt

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