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チェチェンニュース
Vol.02 No.39 2002.11.04

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【コメンタリー】

■チェチェンから見える世界/日本から見るチェチェン

●ロシア政府のなりふりかまわぬ攻撃

ロシア政府は劇場人質事件で自国民を大量に殺してしまった責任を逃れようと、なりふり構わぬチェチェン攻撃を始めた。

人質事件ののち、政府の行動に批判的になってきたマスコミに対して規制法を成立させて言論統制を行う一方、政府系の新聞、テレビなどで、FSBがねつ造したと思われるデマ報道を流している。また、10月30日のザカーエフ副首相の拘留などに見られるように、国外のチェチェン人指導者に対しても圧迫を試みている。

チェチェン報道に熱心なインターネットサイト grani.ru によると、10月31日、ロシア政府のヤストロジェムスキー大統領補佐官は、「チェチェンのアスラン・マスハドフ大統領、シャミリ・バサーエフ司令官の両指導者のモスクワ人質事件関与は明らかだ」と言明した。

ヤストロジェムスキー記者会見:
http://grani.ru/Events/Terror/m.13404.html

ヤストロジェムスキー氏は、劇場占拠事件の首謀者バラーエフ司令官が、携帯電話でゼリムハン・ヤンダルビエフ氏(チェチェンの前大統領)らと交信した音声の傍受記録を公開、「直接の指揮はバラーエフだが、マスハドフ、ザカーエフ氏らを含めてチェチェン独立派最高指導部がすべて知った上で遂行されたものだ」とした。そしてロシア当局の要求により、マスハドフ大統領、ヤンダルビエフ前大統領ら4人が国際刑事警察機構(インターポール)で国際手配となる見込みを明らかにし、デンマークに対しては、拘留されているザカーエフ副首相の引き渡しを強く求めた。

筆者としては、もう数年にわたってチェチェン側はストラスブールの国際人権裁判所、ハーグのユーゴ戦争犯罪法廷などに、プーチン、エリツィン両大統領、ロシア軍首脳らを戦争犯罪人として訴追するよう要請していることも言及しておきたい。

●ロシア、チェチェン周辺国へ圧力を加える

推測するに、ロシア政府は、「チェチェンを支援するものは、国際テロリズムを支援するもの」だという構図を作りたくてしょうがないのだろう。そこで、この人質事件はデンマークで先月末に開かれた「全世界チェチェン民族会議」に日程をあわせて仕組まれたというシナリオまで創作して、「国際テロリズムとの戦い」という、アメリカのやり方をまねて見せた。

これに対応して、これまで一貫してチェチェン関連の怪しげな報道を担当している utro.ru のオレグ・ペトロフスキー記者は、チェチェン指導部とアルカイダとの関係を書き続けている。

マスハドフの政治的去勢:
http://www.utro.ru/articles/2002/10/31/108913.shtml
犯人中にアルカイダ幹部:
http://www.utro.ru/articles/20021030022336108537.shtml

ロシア政府は、ヤンダルビエフ氏がマスハドフ大統領のイスラム世界担当特使を務めて滞在中のカタール政府に圧力をかけ、ヤンダルビエフ氏の追放と事務所の閉鎖を働きかけている。同じような圧力をグルジアとトルコにもかけており、すでにアゼルバイジャンは事務所閉鎖命令を出した。トルコは、自国のチェチェン人は同国の法令を遵守していると切り返し、グルジアはチェチェンの代表部は公的なものではなく、「もともと承認してないものを否定することは出来ないはず」と抵抗している。

ロシア、トルコにチェチェン諸機関追放迫る:
http://grani.ru/Politics/Russia/m.13375.html

●米中の反応

一方アメリカ政府は、ロシア側のさまざまな働きかけにもかかわらず、マスハドフ政権が民主的な選挙で選出されたもので、いまだ多くのチェチェン人が信頼を寄せる存在として認めている。その一部が「アルカイダ・グループと繋がりを持つ」と懸念しつつも、チェチェン紛争を「国際テロリズム」と見ることに対して慎重な姿勢を崩していない。

アメリカは慎重姿勢:
http://grani.ru/Events/Terror/m.13429.html

中国に目を転じれば、国内のチベット、東トルキスタン、内モンゴルなどで少数民族運動を過酷に弾圧し、その拡大を恐れているせいであろう、いち早くプーチン政権のチェチェン民族弾圧に支持を表明した。さらに自国の参考にしようとロシア当局が劇場占拠事件で使用したガスの成分に関して情報収集に血眼になり、「どこよりも積極的なのは中国だ」とロシアのマスコミから皮肉られている。

中国、ガス成分情報収集にやっきになる:
http://www.gazeta.ru/2002/10/31/na1036045380.shtml

●歴史の教訓、あるいは日本の役割

こうして大国の動きを見ていると、筆者は前世紀の歴史を想起せずにいられない。

第2次世界大戦は、「欧米列強」諸大国が、枢軸国やロシアよる小国への侵略にあたって、それら小国を見捨てたことによって始まった。これからもロシアのチェチェンに対する横暴を見逃せば、あるいはチェチェン問題を巡る近隣小国への横暴を黙過すれば、そのつけは必ずわれわれ自身に回ってくるだろう。現在のロシアは、情報治安機関と軍産複合体を主体とする、ファシズム国家に転落する瀬戸際にある。

いまわれわれ日本人にできることは二つある。ひとつは、平和と独立を願うチェチェンへの支持をいっそう強化することだ。もう一つは、ロシアの民主主義者(ソビエト連邦における反体制派であった人々を核としている)たちと固く連帯して、ロシアの不健全な部分に対抗することである。文化的で健康的な隣国としてのロシア連邦は、チェチェンにとって必要なだけでなく、日本にとっても、大切な存在なのだ。

2002.11.02 渡辺千明/本紙コントリビューター

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