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チェチェンニュース
Vol.02 No.43 2002.11.18

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■日本のNGO五団体、チェチェン問題について共同集会

11月11日、東京都にある文京シビックセンターで、チェチェン紛争を憂慮するNGOグループの緊急集会「モスクワ人質事件はなぜ起こったか?〜チェチェン・ロシア関係の現在と過去〜」が開催された。

主催者は、アムネスティー・インターナショナル日本、民間シンクタンク/日本国際フォーラムと本紙チェチェンニュース編集室。また、市民平和基金、チェチェンの子どもを支援する会が協賛した。集会の参加者は100人を超えた。

今回の報告者のうち5名は、いずれも10月24日に発行されたチェチェン劇場占拠グループに宛てた「チェチェンの友人たちへの日本からの声明」の署名人たちで、聴衆は若い人々が中心だったが、数名の政治学者、国際関係研究者が出席。参加者の中にはロシア連邦保安局の関係者と見られる2名の「ジャーナリスト」がおり、プーチン大統領の演説のパンフレットを配布していた。

報告者の一人、フリージャーナリストの林克明氏は、1995年以来、チェチェンを15回訪問して取材してきたベテラン。ごく最近のモスクワ劇場占拠事件の取材を終えてモスクワから帰国し、初の報告会となった。青山学院大学教授の伊藤憲一氏は、民間シンクタンク(財)日本国際フォーラム理事長。同フォーラムは、1996年にチェチェン共和国のヌカーエフ副首相、チマーエフ外相(ともに当時)らチェチェン共和国政府代表団を日本に招待している。

開会に当たって挨拶に立ったアムネスティー・インターナショナル日本の寺中誠氏は、アムネスティー・インターナショナルが進めようとしている「ロシア・キャンペーン」の中心的なテーマがチェチェン問題であるとして今後の活動について説明し、協賛者の一人、鍋元トミヨさんを紹介した。鍋元さんは主婦で、「チェチェンの子どもを支援する会」の組織者として、イングーシにおける小さな学校の共同運営の経験を発表した。

チェチェンニュース編集者、大富亮は近年のチェチェン・ロシア関係とロシアの侵略に対するチェチェンの抵抗の経緯を報告。モスクワでの事件の後で人権侵害の事例が急激に増加していることを指摘。また、この11日の同じ時刻に、世界中でチェチェンの人々を支援するさまざまな催しが持たれており、とくにデンマークの首都コペンハーゲンでは、英国の名女優で人権活動家のヴァネッサ・レッドグレイヴ女史による「国際ザカーエフ委員会」の発足記者発表が行われていることを紹介した。

モスクワから8日に帰国したばかりの林克明氏は、集会前日の10日に放送されたテレビ番組での取材の経験の元に、報告を行った。林氏はチェチェン選出のA.アスラハノフ下院議員をはじめ、有名な弁護士、A.ハムザーエフ氏、チェチェン母親協会、M.マゴマドワさんや、ロシア側ではジャーナリストのA.ポリトコフスカヤさん、そして元人質だったインターファックス通信の女性記者などに取材。

「モスクワに取材に出た11月初め、日本では、非常に凶悪な犯人たちが人質をとってたてこもり、彼らが人質を処刑しはじめたために治安部隊が強行突入した、という報道がたくさんされていました。そこで、人質になり、その後生き残った人たちに話を聞きました。事件のあった劇場でミュージカルに出演していた俳優のアブドラヒムさんという人は、「比較的平静で、手荒なことが行われるという雰囲気ではなかった。人質同士も、互いに冷静でいるように呼びかけていた。全部数えたわけではないが、犯人グループの半分くらいは女性だった」と話していました。

この人によると、犯人たちとは1対1の話し合いもあったそうです。「どこからきたのか?名前はなにか?」という感じで。犯人の一人に、ズーラという16歳くらいの少女がいて、その少女は親戚も家族も殺され、どこで死んでももう一緒だから、この占拠に参加した」「チェチェンに1ヶ月の子どもを置いて作戦に参加した」という人もいたということです。

テレビでは報道管制がしかれ、テレビ局は取材に中に入ったんですけれども、司令官のバラーエフの映像には音声が消されていました。これでは単に武装した野戦司令官がテレビで喋っているというだけで、彼らの「戦闘の停止、ロシア軍の撤退」という要求は、テレビを見ている人々には伝えられなかったわけです」

林氏は、調査取材のなかで、「人質射殺が始まったので突入した」という政府当局の説明に反する証言が出たことを指摘した。

「特殊部隊の突入直前、最初に爆発音がしたということですが、27日の朝、元人質によると、劇場のトイレで何のためか犯人たちが爆弾を爆発させた、といいます。そして、何か悪い知らせが入ってきて、犯人たちがとてもいらいらし始めた時、人質のひとりが立ち上がって、逃げようとしたので、犯人グループが壁に向かって威嚇射撃をした。その直後にガスが入ってきて、後はもう意識がなくなってわからなくなった、そういう証言が得られました」

伊藤教授は、この報告を受けて、チェチェン民衆の戦いは数百年にわたって続けられてきたものと指摘。「モスクワ事件の決死隊がとったテロリスト的手法は断固批判されるべきですが、個人的な感情として、決死隊員たちが自らの若い身を犠牲にして、ささやかに「チェチェンでの戦争を止めてくれ、占領ロシア軍は撤退してくれ」と訴えたその胸中を思うと、自分の胸に熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ません」と語り、チェチェンの抵抗をテロリズムと呼ぶことの不当さ、日本のマスコミのロシア中央寄りの姿勢を批判した。

最後に市民平和基金の青山正氏から、これまでの7年間にわたる基金の活動の紹介と、基金を通じてのチェチェン民族への支援金寄付の依頼が行われた。

これら報告をふまえて、参加NGOは共同声明を採択した。日本のNGOが、チェチェンとロシア全域におけるロシア政府当局の人権侵害について共同声明を出したのは初めて。(渡辺千明)

共同声明:
http://www9.ocn.ne.jp/~kafkas/20021111seimei.htm

東長崎機関での紹介:
http://2.hotspace.jp/~higashi-nagasaki/e2002/E01-2002_55.html

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