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チェチェンニュース
Vol.03 No.05 2003.01.25

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■インターネットに日本語によるチェチェン武装勢力サイト登場?

(大富亮/チェチェンニュース編集兼発行人)

1月17日に、ロシアのインターファックス通信が、意外な情報を配信した。日本に、チェチェン武装勢力と国際テロリスト組織がWebサイトを開設したというものだ。その情報源はロシア軍の北コーカサス対テロ作戦本部である。

このテロ組織のサイトは、チェチェンのゲリラ本部からの情報をもとに彼らの活動を伝えているだけでなく、「日本人テロリスト」数人をリクルートし、チェチェンの戦線に送り込んだという。サイトの名前は Chechenwatch 。本紙とも協力関係にあるニュースサイトである。本来なら取るに足らないレベルの内容だが、国内では共同通信がこの記事を配信した。

ロシア語:
http://www.interfax.ru/show_one_news.html?lang=RU&tz=0&tz_format=MSK&id_news=5615564

英語:
http://www.interfax.ru/one_news_en.html?lang=EN&tz=0&tz_format=MSK&id_news=5615587

Chechenwatch をごらんになった方にはわかると思うが、このサイトは平凡なMSNのサーバーに、個人が地道にチェチェン関係情報を集積し、公開している場であり、テロとはかけ離れた、一般的な言論活動である。インターファックスの英文記事では、その結びに「日本政府は以前から存在する国際テロ組織のサイトを放置している」という、わが国政府への非難も加えられている。笑止である。

さて、今にはじまったことではないが、チェチェンに関しては、あまりの見識のなさにあきれるような報道が、ロシア側だけでなく、日本でも大手新聞・通信社を経由して流されている。たとえば今月14日、毎日新聞と読売新聞は、「チェチェン兵士の遺体の所持品から、猛毒リシンの製造マニュアルが発見された」と報道した。この兵士は独立派のマスハドフ大統領の配下にいたという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030114-00001009-mai-int

この記事の根拠は、ロシアのヤストルジェムスキー大統領報道官の発表のみ。さらに19日、今度は共同通信と毎日新聞が、「<英首相暗殺>チェチェン独立派が画策? 英紙報道」との記事を配信した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030119-00003014-mai-int

4月1日にはまだ早い。これによると最近も「チェチェン共和国の独立派勢力がブレア首相の命を狙おうとしたが、ロシアの情報機関が察知して未然に防いだ」らしく、本当とすると、このところはFSB(ロシア連邦保安局)も、ボンド顔負けの活躍を果たしていることになる。

「報道されていること」の中でも、ひどいものを列挙した。それでは「報道されていないこと」は何だろうか。たとえば;

・2001年の1月18日、 日本にも訪れたことのあるロシア人の人権活動家ビクトル・ポプコフ氏が、チェチェンの村落に救援物資の薬品を届ける途中、ロシア軍に銃撃され、重態になった。半年以上治療を受けた後に、8月にモスクワで死亡した。50歳だった。これは、ロシアのNGOであるロシア・チェチェン友好協会が伝えた。

・昨年7月 8日、チェチェンのアルハン・ユルト村で連邦軍のヘリコプターが粉状の物質を散布した後、放牧していた数十頭の牛が異常を来して死んだほか、これまで健康だった住民が数日の内に4名が急死したと、カフカスセンターが報道した。

・同じ月の15日、モスクワで国際ラジカル党(TRP)の活動家たちが、クレムリンの城壁わきを流れるモスクワ河の水上バスの甲板からクレムリンに向かって、「プーチン大統領は戦争終結に向けての交渉を直ちに始めよ!」というスローガンを大書して水上デモをした。TRP自体が伝えている。

世界で報じられたことすべてを検証する手立てはない。だが、筆者の理解では、FSBの007まがいの活躍譚よりも重要なのは、こういった情報である。NGOや政党が発表した情報ゆえに掲載しないという論理は、ありえない。また、カフカスセンターがチェチェン軍よりならば、ヤストルゼムスキー氏はロシア側を代表しているはずだ。こういうことになる原因はいくつか考えられる。

外信の見出しだけを読み、読者が「関心を持ちそうなこと」という基準で選択をしている可能性。そして、ロシア側発表ならば掲載し、チェチェン側発表では掲載しない、権威主義の存在。報道機関内部に、ロシア側の意向に意識的に同調するライターがいるという可能性については、さしあたって考えないことにしよう。いずれにしても、新聞の購読者数が減っていくのも無理のないことのような気がする。

筆者はこのチェチェンニュースを発行することによって、大手、地方紙を問わず報道機関に多数の知人ができた。その多くは、チェチェン紛争についてかなり近い問題意識を共有できる人々であり、私のようなアマチュアをはるかにしのぐ知識と経験を持っている。そして知見を記事にすることに努力をしている。その人々が、こうした無責任な報道に関わっているとは思いたくない。

「日本語によるチェチェン武装勢力サイト登場」という記事のロシア語版の結びは、英語版のそれと異なっている。それは、 ChechenWatch と実際に交流を持っているチェチェン人ジャーナリストのサイト、「カフカスキー・ベストニク」の編集者として、M・ツツァーエフという人物の名がさりげなく挙げられていることである。これは、当のサイト管理者、マイルベク・タラモフの本名である。

タラモフは、バクーに避難しながらも言論活動を続け、ロシアのチェチェン侵攻に抗議を続けている人物である。最近筆者がアゼルバイジャンのバクーを訪問した際にも、3泊ほど泊めてもらった。彼は一匹狼として、政府や野戦司令官などの後ろ盾もなく、公然と執筆活動を続けている。また、彼の友人は全カフカスにいる。だが、今回、インターファックスの記事が流されたことで、チェチェン・ロシアに残る彼の親族は、新しい危険を負ったことになる。すでにモスクワでは彼の縁者が、警察の妨害で事業を中断せざるを得なくなっている。

こうして三つのことが明らかになった。ロシア側は恒常的にチェチェンについてのディスインフォメーションを流していること。その中には、見かけ以上に陰険な意図が隠されている場合があること。そして、日本にも、問題のある姿勢で報道に取り組んでいる人々がいるということだ。筆者は、これらの前提を理解した上、注意深くチェチェン報道を読むことを、改めて読者に提案したいと思う。

Chechenwatch:
http://groups.msn.com/ChechenWatch/_whatsnew.msnw

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