チェチェン総合情報


チェチェンニュース Vol.03 No.38 2003.10.20

発行部数:988部

■チェチェン人ジャーナリスト、いよいよ来日!

10月25日から、チェチェン人ジャーナリスト、ザーラ・イマーエ ワの来日講演ツアーが始まります。戦争を目撃した子どもたちの言葉を丹念に 記録したビデオ作品「子どもの物語にあらず」を携え、彼女はチェチェン戦 争のどんな情景を語ってくれるのでしょうか。今回は、映像作家の岡田一男さ んに、ザーラさんについての解説をお願いしました。主催はアムネスティイン ターナショナル日本。開催日程はこのメールの末尾をご覧下さい。(編集部)

■ザーラ・イマーエワとは誰か?

●私にはおじいさんおばあさんの記憶がない

ザーラは1961年9月、チェチェン・イングーシソビエト社会主義自治共和国のソ ビエツキー地区、ソビエツコエ村で生まれた。この村は、旧来の地名をシャト イと言い、チェチェン南部山岳地帯に鋭いV字谷を作って流れるアルグン川の谷 間の山村である。彼女の両親は、いずれも1944年にカザフスタンに強制移住さ せられたチェチェン人で、悲惨な境遇の中で両親を失った孤児たちだった。 1957年にチェチェン人の復権が認められ、59年にシャトイへ戻って間もなく、 ザーラの父母は結ばれ、彼女が生まれたのだ。ザーラは、子ども時代を振り返っ て、「私には、ものを尋ねられる、おじいさん、おばあさんが誰もいなかった。 両親が二人とも孤児だったから。」と語っている。

●映画監督になりたかった

村の中学校を卒業した彼女は、モスクワの全ソ国立映画大学(VGIK)劇映画監督 科に入学し、映画監督となることを夢見た。しかし彼女は保守的な親戚一同の 反対に遭遇し、説得に2年がかかった。ようやくモスクワに出た山国の少女にとっ て、ほとんどの入学者が映画関係者の子弟で占められた80年代初めのVGIKは、 あまりにも狭き門であった。

VGIK入学は果たせなかった彼女だが、狭き門ということではそれ以上の、モス クワ大学(MGU)ジャーナリスト学科への入学した。そして学生アルバイトに撮影 所で助手を務めることで映画制作実務を身につけた。ジャーナリズムと映画制 作の習得だけが彼女のモスクワ時代ではなかった。彼女は学生結婚し、一人息 子のティムールを授かった。また、後のチェチェン社会を率いる重要人物たち と出会った。その中には、ソ連空軍の高級将校ジョハル・ドゥダーエフ、MGU法 学部の先輩、ホジ=アフメード・ヌハーエフらがいた。彼らは当時既に地下組 織「チェチェン独立委員会」をつくっていた。

●独立運動の激流の中で

ザーラはMGU卒業に10年以上かかった。子育て休学の上、卒論テーマ、「チェチェ ン人強制移住とジャーナリズム」が、大学当局を当惑させた。彼女が正式卒業 を果たしたとき、ソ連は消滅していた。民主化の高揚の中でチェチェンの首都 グローズヌイに戻った彼女は、小さな民放テレビ局(NTV)を立ち上げる。しか し、民主化から独立に突き進む激流が、NTVを洗い流した。エリツィンのロシア 連邦は独立を阻もうとチェチェンに介入する。

大統領となったドゥダーエフは、ザーラを外務省報道官に任命する。独立派が 首都を追われると、国外に出てジャーナリスト活動を続けた。97年、マスハー ドフ政権が誕生し、こんどは文化省映画担当次官に任命される。しかし灰燼に 帰したチェチェンの「映画」は限りなくゼロに近かった。何も進展のない中、 失望した彼女は辞任し、モスクワでチェチェン音楽家たちのCD出版のプロデュー サーの傍ら、テレビ番組制作の企画を進めて再起を図る。99年夏、ようやく通っ た企画、「チェチェンの石塔建築」を巡る旅番組の撮影準備を故郷のシャトイ 村で進めていた彼女に届いたのは、バサーエフ派のダゲスタン侵攻と、引き続 くロシア軍のチェチェン侵攻のニュースだった。

●難民となって

アルグン峡谷にあるシャトイ村には幹線道路は1本しかない。谷沿いに下れば 平原部に出てグローズヌイに至り、谷を遡れば上流は、大コーカサス山脈の裏 側、グルジア領まで続いている。彼女は親戚に託して息子のティムールをイン グーシ共和国に送り、老母の世話をしながら村で情勢を伺い、晩秋に、避難民 たちを率いてグルジアに逃れた。雪の峠越えの道は厳しく、健康を害した彼女 は長く後遺症に悩まされることとなった。グルジアでジャーナリスト活動を再 開するつもりの彼女であったが、避難民を送りとどけたアゼルバイジャンの首 都バクーで、、ヤンダルビーエフ政権で第一副首相を務めた後、総合商社「コー カサス共通市場(CCM)」を開いていたMGUの先輩、ホジ=アフメード・ヌハーエ フに勧められ、CCMの広報担当となった。

●離別家族の再会

ロシア軍はついに2000年前半、グローズヌイを陥落させ、また山麓部のコムソ モリスコエ村を包囲して、ここでハムザト・ゲラーエフ司令官の率いるチェチェ ン軍部隊を壊滅させる。この包囲戦の中で、ザーラの夫も死んだ。イングーシ に逃れた息子ティムールを引き取りにザーラは行けなかった。独立派政府官僚 の経歴は、拘留される危険をはらんでいた。彼女の親友がモスクワ経由で彼を バクーへ送ろうとした。

50代のチェチェン女性と13才のティムールは、モスクワに着くとチェチェン人 というそれだけの理由で、警察に拘禁された。彼らの窮状を救ったのは、ロシ ア人のパイロットだという。彼は強引に二人を引き取るとイングーシ行きの便 で出発地に送り返した。ティムールが母親の元にたどり着いたのは別れてから 半年後だった。シャトイに残っていた老母もバクーに来た。ザーラは自分たち を珍しい幸運という。周りの人びとは、はるかに悲惨な離散経験をしているか ら。

●ビデオ「子どもの物語にあらず」

2000年夏、チェチェンからの難民流出は続いていた。CCMで働くザーラは、難民 の記録を残すことを思い立ち、被写体となってインタビューに応じてくれる子 どもたちに、せめてものお礼に渡すピロシキ(ロシア風の揚げパン)を持って は、激務の合間に難民の一時収容施設などを回っては、記録を残していった。 表現に一体感を持たせようとインタビューは必ず白い背景の前で行った。2000 年秋、アゼルバイジャンの小さな民放テレビ局の技術協力があって「子どもの 物語にあらず」は、完成した。

当初、彼女は意気込みと結果のギャップに落ち込んだようだが、ロシアの人権 団体が先ず、この作品に注目した。2001年3月に彼女をモスクワに招いてアンド レイ・サハロフ記念博物館・社会センターが発表会を開催した。4月、モスクワ NTVの当時のメインキャスター、エフゲニー・キセリョフは、夜の最終版ニュー スで発表会の模様を紹介し、作品のかなりの部分を放映した。だが2週間後NTV のウェブサイトから「子どもの物語にあらず」放送の事実が抹殺された。しか し、ロシアの人権団体は、「子どもの物語にあらず」のコピー配布を続け、少 なからぬ教師たちが、学校でこのビデオを見せている。またチェチェン戦争集 結を求めるイベント会場でしばしば、この作品が上映されている。

(2003.10.19 岡田一男/映像作家)

■「子どもの物語にあらず〜チェチェン紛争がもたらした悲劇」/開催日程

最新情報はこちらでご確認ください:
http://www.amnesty.or.jp/campaign/Speakingtour_schedule.htm
問い合わせ先: info@amnesty.or.jp

10月25日 秋田 アムネスティ秋田
会場:ジョイナス(県民会館となり/秋田駅より徒歩10分)
午後1時半開演  参加費:400円前後

10月27日 青森 アムネスティ八戸
会場:八戸聖ウルスラ学院高等学校視聴覚室
午後1時20分〜3時10分

10月29日 北海道 アムネスティ札幌ノルテ
会場:札幌市男女共同参画センター(札幌駅北口)
午後6時半開場

11月1日 神奈川 アムネスティ鎌倉/愛川(共催)
会場:フォーラム横浜交流ラウンジ(ランドマーク13F)
午後2時〜4時

11月3日 長野 アムネスティ信州伊那谷
会場:飯田勤労者福祉センター 2F 視聴覚室
(飯田市東栄町 飯田市消防署前)
午後2時〜4時半 参加費:1000円

11月6日 和歌山 アムネスティ田辺
会場:田辺市民総合センター2階会議室4
午後7時〜9時

11月9日 徳島 アムネスティ徳島
会場:ふれあい健康館視聴覚室(徳島市沖浜東2-16)
午後2時〜4時半

11月10日 岡山 アムネスティ岡山
会場:YMCA会館(岡山市中山下1-5-215)
午後6時半開演(6時受付開始)

11月12日 広島 アムネスティひろしま

11月14日 大分 アムネスティ日田
会場:筑後川交流センター「紫明庵」
(日田市亀山町、JR日田駅より徒歩20分)
午後7時開演(6時半受付開始)
会費 500円(交流会飲食代1000円)

11月16日 熊本 アムネスティ熊本
会場:熊本学園大学4号館(412号室)
〒862‐8680 熊本市大江2-5-1
13:30〜16:50

11月18日 鹿児島 アムネスティかごしま
会場:サンエールかごしま(鹿児島市荒田1-4-1)
午後6時半(6時受付開始)〜

11月20日 宮崎 アムネスティ宮崎
会場:宮崎市民プラザ4階大会議室(宮崎市役所隣のビル)
午後6時半開演(6時受付開始) 参加費:500円

11月23日 大阪 アムネスティ大阪事務所
会場:piaNPO6F会議室(地下鉄中央線「大阪港」駅より徒歩5分)
午後2時〜4時半   参加費:一般800円、学生500円

11月26日 石川 アムネスティ金沢
会場:石川県教育会館2F第一会議室 午後7時〜9時

11月29日 新潟 アムネスティ新潟
会場:新潟市総合福祉会館視聴覚室(新潟伊勢丹の裏手)
午後2時〜5時 

12月3日 東京 アムネスティ東京事務所
Tel:03-3518-6777 
E-mail:stoptorture@amnesty.or.jp (川上)
会場:ハーモニックホール(西新宿7-21-20 関交協ビル 新宿駅西口
より徒歩8分、青梅街道沿いの北陸銀行を右に入って3件目のビル)
午後6時半開場