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チェチェンニュース Vol.04 No.27 2004.08.24 発行部数:1092部

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 くわしくは: http://chechennews.org/event/index.htm#20040826
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■汚い戦争はいつ終わる−−−アニメ「春になったら」を巡って
 (岡田一男・映像作家)

 昨年秋に、アムネスティ・インターナショナル日本の招きで、チェチェン の女性ジャーナリスト、ザーラ・イマーエワさんが、記録ビデオ「子どもの 物語にあらず」を携え、ひとり息子のティムール・オズダミール君とともに 来日したとことは、ご記憶の方も多いと思う。ふたりは日本を離れたあと、 10分足らずのチェチェン難民の子供たちの絵をもとにしたアニメの小作「春 になったら」を完成させた。

 世界中どこでも、子どもたちは絵を描くのが好きだ。身の回りの愛する人 々を描き、見たこと、印象深かったことを描き、夢を描く。チェチェン難民 の子どもたちも変わりはない。ザーラ/ティムール親子は、子どもたちの膨 大な絵を丹念にスキャナーでデータ化し、コラージュし、動きを加えていっ た。全体の構想は映像作家でもある母親のザーラが立て、パソコン操作に長 けた当時17歳のティムールがオペレーターになった。

 このような、カメラを使わないパソコンベースでのアニメーション製作 は、宮崎駿監督に代表される、世界の先端のアニメーションとは対照的に、 誰でも作れるアニメーションで、これまで製作経験の少ない国々からも新し い作家を産みだす、もうひとつのトレンドだ。

 私は昨年暮れに、イランの国際映像祭に、審査員として参加した。私の役 目は科学映像の審査だったが、アニメ部門には、イラストレーターや、絵本 作家など、これまでのアニメとは別の世界の人々が参入し始めているのを 知った。「春になったら」は、この世界の新しい流れの中に、チェチェン・ ディアスポラもまた身を置いていることの証しである。

 子どもたちの絵のすさまじいリアルさには驚かされた。彼らは攻め込んで きたロシア軍のヘリコプターの特徴をはっきり描いているし、主力戦車と歩 兵戦闘車の区別さえ描き分けている。誰かが目撃したのであろうか、撃墜さ れたヘリコプターから乗員が空を舞って落ちてくる様子も描いている。私は ティムール君とザーラと選んだ原画を見せてもらったことがある。子どもた ちは、物語の流れを意識せずに描いた。「春になったら」のオリジナル性 は、たくさんの子どもたちの絵を集めて、そこに物語性を創り出したところ にある。

 ところで、目撃証言としての、子どもたちの絵の力を見逃さなかった人々 が他にもいる。この植民地戦争の当事者、ロシア政府だ。国際的な医療支援 NGO、メドゥサン・デュ・モンド(世界の医師団)は、チェチェンの隣 国、イングーシ共和国で、チェチェン難民への医療活動を行っているが、子 どもたちへの心理的リハビリテーションの一環として行っていた絵画療法 を、ロシア側は禁止したという。

 長らくソ連の医療は政治に支配されてきた。チェチェンの医師ハッサン・ バイエフが自著「誓い」(アスペクト刊)で記しているように、一方ではソ 連/ロシアの医師たちも、普遍的な医療のあり方を誓うが、もう一方で途方 もない政治の介入に汚染されている。この絵画療法の禁止も、急速なファッ ショ化が懸念される現代ロシアの動向が見て取れる小さな事件だ。

 「いつ戦争は終わるの?」難民の母親はそう聞かれて、「春になったら」 と答えた。その春はもう4回も巡ってきたのに、戦争は終わりそうにない。 近く日本で刊行されるアンナ・ポリトコフスカヤ著書のタイトルは、「チェ チェン やめられない戦争」。その前のルポルタージュのタイトルは、「汚 い戦争」だった。日本から遠く離れたコーカサスの片隅で行われているこの 「汚く」、「やめられない」戦争は、ロシアのファシズムと不可分に結びつ いており、そのロシアは、日本の隣国なのである。

 私たちにできるのは、ロシア政府がどう言いくるめようと、犯罪的な、 チェチェンでの戦争を見逃さないという意思表示をすることだと思う。それ は、ロシアの内部で民主主義のために戦う、心ある人々への連帯の意思表示 であり、そして、チェチェンの子どもたちの小さな命のためなのだ。

岡田さんのメールアドレス: kazuokada1@hotmail.com

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