チェチェン総合情報
ホーム | 更新情報 | 基礎情報 | チェチェンニュース | アーカイブス | 読者の意見 | イベント | ポリトコフスカヤ情報 | 林克明の仕事 | リンク | サイトについて

チェチェンニュース Vol.05 No.03 2005.02.05

チェチェン総合情報: http://chechennews.org/
発行部数:1711部

■バサーエフ、イギリスの民放でインタビューを受ける

 イギリスの民放、チャンネル4に、チェチェンの野戦司令官シャミーリ・バ サーエフが登場した。といっても、ビデオを通して。バサーエフは、ベスラン 事件に責任を認めつつも、どのように関与したかについては何も語っていな い。また、「プーチンが強行突入をするなんて思いもしなかった」とも発言し ていて、真意がつかみにくい。

 最近のバサーエフは、ロシア国民全体に対して「プーチンの共犯者」と決め 付けていて、今回のインタビューの中では、テロの対象が、ロシアだけではな く、西欧を含む世界全体に及ぶと示唆している。これからの同様のテロを計画 しているとも言う。

 賛否両論、というより、この内容に嫌悪感を抱く人は多いと思うが、訳すう ち、一面の真理も語られていると思った。確かに非道なテロリストとしてバ サーエフを糾弾することはたやすい。本人もそれを挑発しているふしがある。 一方で、94年以来のチェチェン戦争という大きな事件の中で、20万人の人 びとを殺した犯罪は今も許されていて、千人以下の人びとを殺した犯人(とさ れる人物)は、世界中の世論から非難されている。

 番組の音声部分が記事にされていたので訳した。ロンドンで番組を見ていた Mさんからのコメントも、全体の雰囲気を理解するのに役立ったので、この場 を借りてお礼したいと思う。この番組の放送に先立って、ロンドンのロシア大 使館は「テロリストに放送時間を与えることは、<テロとの戦い>を進める協 力体制に亀裂を生む」として、イギリス政府に対する強硬な抗議声明を発表した。

 毎日新聞 英TV局が武装勢力の会見放映 露政府反発:
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050205-00000021-mai-int

■チャンネル4−−−ベスラン再び?

http://www.channel4.com/news/2005/02/week_1/03_basayev.html

 ジョナサン・ミラー

−−−(ナレーション)
 ベスラン第一初等学校での人質救出作戦の結果、330人の、主に子どもた ちが死亡しました。この事件の背後にいたシャミーリ・バサーエフは、チャン ネル4に対して、再び同じような事件を起こす可能性があると語りました。 彼はべスラン事件だけでなく、2002年に120人が死亡することになったモスク ワ劇場占拠事件でも黒幕でした。現在は姿を隠していて、首には 1千万ドルの賞金がかかっています。バサーエフは、 ロシアがチェチェンを占領している限りは、自分の闘争は正当 なものであると主張しています。バサーエフの理由? この紛争で殺された数十万と いうチェチェンの市民です。

 ロシア政府は今回、英国政府に圧力をかけて、この素材の放映をやめさせよ うとしました。 視聴者の皆様はバサーエフの意見は不愉快だと思われるであろうと、当番組でも考えましたが、 一方で彼が子どもたちの殺害を、どのように合理化するかという点で、 関心を持つ方が多くいることを前提に放映するものです。

 国際部のジョナサン・ミラーがお伝えします。

−−−(ミラー)私たちチャンネル4は、一連の質問をシャミーリ・バサーエフに送りました。 あの事件の黒幕だったとして非難されているチェチェン抵抗勢力の司令官です。 私たちは彼に理由を訊きたいと思いました。 子どもたちを殺すことが、いったいどうして、彼の大義の助けとなるというのでしょう。

 私たちは質問リストをヨーロッパのある都市で仲介者に渡し、ビデオテープ を使って返事をよこすようにリクエストしました。どこにバサーエフがいるか はわかりません。おそらくチェチェンにいると思うのですが。それから4ヶ月 が過ぎて、私達はコーカサス地方からのメールを受け取りました。 そのメールには、小包を用意したから受け取ってほしいとありました。そ して私達は、中東のとある都市のショッピングセンターである男と会うように私たちは指示 されました。それがどこであるかは申し上げることはできません。 そして先週、箱に入った3枚のビデオCDを入手したのです。

 ビデオに写っていたのは、確かにバサーエフでした。ベスラン事件以降、初 めて姿をあらわしたことになります。質問は彼のラップトップに送られていま した。そして、1時間にわたって、バサーエフはそれらの質問にすべて答えました。 この映像はバサーエフの仲間が撮影したものです。 おそらく、3週間ほど前だと思われます。 彼の背後にかかっている幕には、「アッラーの他に神はなし、ムハンマドはその預言者なり」とあります。 他のイスラム主義グループ、および他の戦争を連想させる図像です。

          <答え始めるバサーエフ>

バサーエフ:「正直なところ私は、当初ベスランでこれが起こることを計画し ていたわけではない。私たちはモスクワかサンクト、あるいはその両都市で同 時にと作戦を計画していたのだ。しかし資金がなかった。ベスランで起きたこ とについて私たちが喜んでいるわけではない。正直、私はベスランで起きたこ とでショックを受けさえしているのだ。私は今でもショック状態にある。あん な残酷な結果になるとはね」

−−−しかしバサーエフは、彼の部下たちが何をしたかを語るのではなく、ロ シア人について語ろうとします。彼は、学校に突入して子どもたちの命を奪っ たことを非難しているのです。<あんなことをするとは思いもしなかった>と。

 バサーエフは、ロシアで最も悪名高い男で、いわばロシアのオサマ・ビン・ ラディンです。プーチンはこう言います。

プーチン大統領:「われわれは、ああいうゴロツキとは交渉などしない。子 ども殺しと交渉しろなどと言う資格は誰にもない。私たちの誰もが、ロシアの町ベスランで起こったことのために深く苦しみ、 悲しんでいるのだ。ベスランでは私たちは人殺しを相手にしなければならなか ったばかりか、無防備な子どもたちに対して武器を使った連中を相手にしなけ ればならなかったのだ。人殺しとも、子どもに武器を向ける奴らとも、交渉などはしない」

−−−ロシアはテロに慣れてしまっていますが、ベスランの事件は国中にすさまじい衝撃 を与えました。

バサーエフ:「われわれを正しく理解してもらいたい。いまは 戦時なんだ。ロシア人はこの戦争のために税金を納め、この戦争に兵士たちを送り込む。 ロシアの司祭たちは兵士たちに聖水をかけて〈聖なる務め〉とやらを祝福し、 兵士たちを祖国の英雄的守護者と呼んでいる」

 「われわれはと言えば、<テロリスト>。どこまでめでたいんだ?ロシア人 は戦争の共犯者だ。武器を全員が手にしていないとしても」

         <資料映像−−テロ事件の映像>

−−−バサーエフは自分はテロリストでないと強く確信しているようで、 キリル文字で「アンチ・テロ」とプリントされたTシャツをわざわざ着ています。 しかしそれでも、膝には6連装グレネード・ランチャーを抱えています。 11年間のゲリラ司令官 としてのキャリアのなかで、バサーエフは次のようなことをしてきました。ハ イジャック、人質事件、爆破。10年前、南ロシアの病院を占拠し、結果として 130人が死亡しましたが、バサーエフは逃げおおせています。2年前にはモス クワ劇場占拠事件で黒幕になり、ロシア特殊部隊の突入救助作戦によって120 人が死亡しました。

 ベスランの数週間前には、ロシアの航空機2機を空中で爆破し、モスクワでは 地下鉄を爆破しました。その次がベスランでした。しかしこのときの犠牲者は 子どもたちでした。バサーエフはプーチンがどこまでやるかを読み誤ったと言 っています。全世界的に強い嫌悪感が巻き起こり、そのためにロシアは、これ はロシアの「対テロ戦争」なのだと位置づけることができました。ベスランはバサーエフ にとって裏目に出るものと思われますが、ショックを受けたと言いつつも、 バサーエフはまた同じようなことを繰り返すと私たちに予告します。

バサーエフ:「この先もベスラン型の作戦を私たちは計画している。それはそうせざるを得 ないからである。今日もチェチェンの市民は(誘拐され、)失踪している。少 女たちが跡形もなく姿を消している。彼らは誰であろうと連れてゆく。このカ オスを止めるために、私たちはあれと同じ方法を取るしかないのだ。 シニカルに見えるかもしれないが、世界に対して何度でもロシア国家の仮面 を剥ぎ取って示し、プーチンの悪魔の角の生えた素顔を示すためだけであるとしても ――そうすれば世界はプーチンの本当の顔を見る、私たちはこういった作戦を計画す る、そしてそれらの作戦を実行するだろう。ジェノサイドを終わらせるためには、 私たちは手段を選ばない」

−−−ここで「ジェノサイド」と呼んでいるのは、チェチェンでのロシアに よる戦争のことです。ここでは、10年間の間に、100万人の人口のうち、7万 人から20万人の人々が死亡しています。第一次の戦争が終わってから3年後、 プーチンは第二次戦争を開始しました。この独立を志向する地域に対する強硬 なスタンスが、6年前に彼を大統領職に押し上げる力になりました。

   <資料映像−−破壊されつくしたグロズヌイの様子など>

−−−しかし、戦争はロシアでは不人気なものになりつつあります。2万人と も言われる兵士たちが死亡してもいます。バサーエフのウェブサイトにアップロード されたビデオ映像には、兵士たちが どのように死んでゆくかが映されています。しかし、 まだこれからもベスランのようなことを計画していると述べておきつ つも、バサーエフは、これまでに既にあまりにも多くの死者が出ているとも言 っています。

バサーエフ:「そのような理由で、 私たちには戦争をやめる心積もりがある。そして、マス ハドフ(独立派大統領)が言っているように、無条件で(和平)交渉を始める心積もりがある。 だが1つだけ条件がある。それは、私たちの領土からロシアの占領軍が交渉の 余地なく完全に撤退することである。もしもロシア人たちがチェチェン人への ジェノサイドをやめて軍を撤退するなら、私自身法廷に立ったっていいし、ど んな判決だって敬意を持って受け入れる」

−−−しかしバサーエフはロシアが撤退しようとしないことを知っています し、それはプーチンにとって絶対に譲れない点でもあります。バサーエフはロ シアのチェチェンでの軍事行動が、彼の言葉を借りれば<ブーメランが戻って くるように>、ロシアだけでなく、ヨーロッパ、さらに世界全体を覆うだろう と警告しています。クルアーンやウィンストン・チャーチルや中国の思想家の言葉を引用しながら、 彼なりのジハードへの理由付けをしながら(この部分は番組では省略されている:訳注) も、バサーエフの動機はより暗く、より根本的なものになってゆきます。

バサーエフ:「これは、戦争なんだ――あなたたちの国のダーウィンが書いたような猿の子 孫たちと、アダムの子孫たちの。 動物は動物の居場所に戻すための。私は偉大なる神に、そして、ジハードへの道、神へとまっすぐに続く 道を歩みし者にこれをささげる。アッラーに栄光あれ」

−−−そういった万能の祈り文句と一緒に、ジハードの戦士であり、哲学者で あり、子ども殺しであり、自由の戦士であるバサーエフは、私たちの質問への回答を終えました。 バサーエフはこのように、昨年9月にベスランで自身が行なったことは正当な ことだったと弁明したわけです。しかし、どうしてこのようなことになってしまったのかを、 あなたなら、子どもにどう説明なさるでしょうか。

<了>

大使館からの抗議についてのコメント、チャンネル4の立場の説明:
http://www.channel4.com/news/2005/02/week_1/03_basayev.html

バサーエフの人物情報:
http://chechennews.org/basic/biograph.htm#Basayev

▼ 通信費、事務経費の寄付を歓迎します。金額は特に指定しません。
  三井住友銀行 溝ノ口支店 2835929チェチェンニュース編集室

▼ 新規購読/購読停止はこちらから:
  http://chechennews.org/chn/sub.htm

▼ この記事についての、あなたのご意見をお寄せください: ootomi@chechennews.org いただいたメールは、内容により、サイトでご紹介いたします。