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チェチェンニュース Vol.05 No.22 2005.08.10 トルコのカフカス人とチェチェン戦争

発行部数:1645部

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集会報告:私たちはどこから来たのか? <トルコのカフカス人とチェチェン戦争>

文責:中井まさお 写真:永井亜矢子/周香織

 チェチェン周辺地域におけるチェチェン難民やディアスポラを扱ってきた最近の報告会に続いて、トルコからの留学生を招いた集会が7月30日、東京で開催された。テーマはトルコにおけるチェチェン難民とカフカスディアスポラ。チェチェンを含むコーカサスの諸問題に取り組む「カフカスヤ・フォルム」のメンバーで、カフカスディアスポラの末裔でもあるゼキエ・トスンさんが報告した。参加者は35名。

トルコにおけるカフカスディアスポラについて

 ロシアとカフカスの戦争が始まって270年が経った1864年、ロシアは約100万人のカフカス人を周辺地域に追放した。カフカス人にとって「大追放」として今も記憶されている出来事だ。追放されたカフカス人は当時のオスマン=トルコ(現在のトルコやシリア、ヨルダン、エジプト、パレスチナなど)の各地に離散し、彼らの帰郷は戦争の継続とロシア軍の妨げもあって結局叶わなかった。その子孫が今日のトルコにおけるカフカスディアスポラだ。第一次大戦でオスマン=トルコが滅んだ後、彼らは現在のトルコを第二の故郷として今に至ってる。

トルコのカフカス人

 トルコを第二の故郷と位置づけたカフカス人たちは、トルコの各地に文化協会やさまざまな団体を設立した。特に重要なのが、カフカス協会連合、カフカス基金、カフカス連合の3団体だ。カフカス協会連合はトルコのカフカス人がトルコに同化することのないよう運動している団体で、カフカス基金はトルコにいながらカフカス人としての意識を高めるための情報を発信している。カフカス連合は将来のカフカス統一を見据えて活動を続けているが、いずれもカフカス人のアイデンティティに関わる「大追放」の記念イベントを毎年5月21日に行っている点で一致している。イベントでは、140年前の追放を忘れないためには、カフカス人が過去を思い起こすだけではなく、ロシアの責任が国際社会に認められることが必要だという立場から、大追放という事実に加えて、現在のチェチェン問題と過去から続くカフカス問題の認識を国際社会に迫るメッセージが発信されている。

愛するコーカサス 〜 さよならコーカサス

トルコに来たコーカサス人
どこから来たのか忘れてしまったのか
忘れる事ができるのだろうか
赤いバラは水を流れ、コーカサスへ
そして今、追放された人々の想いは?
戦争は終わったのか?

チェチェン戦争…
10年間で死者25万人,難民40万人
望んだ平和はもたらされたのか
トルコに居るチェチェン難民たち
忘れることはできるのだろうか
ディアスポラは忘れない

侵略者プーチン…
チェチェンから出て行って
140年前に行われた事
そして今行われている事
歴史は繰り返されているのではないか?

チェチェン難民の娘メディナ
私たちは難民として暮らしたい訳じゃない
家や故郷に帰りたい
平和が欲しいの

メディナのような悲しみは
140年も続いてきた
チェチェンにいる難民と一緒に
この戦争は終わるのだろうか

 (会場映像より抜粋 / 制作:ゼキエ・トスン、周香織)

カフカスヤ・フォルム

 ゼキエさんは次のように語る。

 ・・・大追放によって異国の地トルコにやってきた私たちは、6世代にも渡ってトルコで暮らしてきました。それはカフカスを故郷と思いながらも、トルコも第二の故郷として考え、トルコ人的アイデンティティを作り出してきたからです。カフカスヤ・フォルムの設立は、元々はイスタンブールにいるチェチェン難民キャンプに対する支援をきっかけに始まりました。しかし今では、難民キャンプへの支援の他にも、カフカスに関する専門家や記者を招いて、政治や国際問題、ボランティアなどの授業を設けたり、イスタンブールの外にいるディアスポラへの情報発信を行ったりしています。カフカス問題に関心を持たないカフカス人たちにも、この問題を伝えています。また、伝統的なアコーディオンを弾いてカフカスダンスをしたり、国際社会に訴えていくために、さまざまなイベントに力を入れています。

質疑応答

参加者:トルコにいるディアスポラは700万人だということでしたが、トルコとの衝突はなかったのですか。

ゼキエ:衝突はあったかもしれませんが、現在を見ても全体的に非常にうまくやっています。

参加者:トルコ人とディアスポラの共通点は何でしょうか。

ゼキエ:自分の国を守るという意識です。

参加者:カフカスとチェチェンとは違うと思いますが、何か連帯感を生み出す共通性はありますか。

ゼキエ:カフカス人としての強いアイデンティティがあれば、トルコとチェチェンのように異なる国の人間であっても、同じカフカス人として連帯することができると思います。

参加者:カフカス人としての連帯感は、ムスリムとして連帯感なのでしょうか。

ゼキエ:もちろんカフカスにはムスリムが多いのですが、ムスリムとしての自覚よりも、カフカス人としての自覚の方が先に来るので、宗教を超えたカフカス人としての連帯感が強いです。

参加者:カフカスヤ・フォルムの参加者はまだ少ないということでしたが、何人くらいですか。

ゼキエ:毎回出席しているのは12人くらいだと思います。

参加者:チェチェン難民がトルコでなかなか難民認定されない理由は何でしょうか。

ゼキエ:トルコの政策で、ヨーロッパ(チェチェンを含む)からの難民は、入国を許可しても支援はしないという立場を取っているからです。

参加者:難民認定の利点は何ですか。

ゼキエ:難民認定を受ければ、学校に行ったり、働いたりすることができます。逆に、難民認定をされないと、学校へも行けないし、働くこともできません。

参加者:トルコでは、チェチェン支援を政治的に行うという意見はありましたか。

ゼキエ:かつてはかなりあったようですが、今はまったくありません。

終わりに

 ここ数ヵ月、チェチェンのみならずカザフスタンやトルコ、アゼルバイジャンにおけるチェチェン難民やディアスポラについての報告をしてきました。受験生向けの時事問題集に取り上げられたチェチェン戦争。少しずつチェチェン戦争は書物に取り上げられつつある。しかしはたしてチェチェン戦争に関する知識は本当に広まっているのだろうか。はたしてチェチェンに関心を持つ人は増えているのだろうか?文字が勝手に歩き出しているのではないか、そんな疑問を抱きながらの今回の集会。トルコへ向けられた視点を再びチェチェンのもとへ。

 では次回の集会で会いましょう。


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