チェチェン総合情報
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チェチェンニュース Vol.07 No.10 2007.04.09

http://chechennews.org/chn/0710.htm (HTML版) 発行部数:1650部

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昨夜から都知事選の結果に腐っていましたが、気を取り直して、プーチン宛ての葉書とファックスを作ってみました。R・カディロフを野放しにするな、チェチェン戦争を終わらせろ、という内容です。よろしければそのままプリントアウトしてご利用ください。

いつか必ずカディロフやプーチンに歴史の審判が下されるのだとしても、いま試されているのは、私たち自身がどのような選択をするかということだと思います。(邦枝律/チェチェンニュース)

INDEX

■歴史はR・カディロフをどう語るか

カディロフ

●最年少のチェチェン共和国大統領

チェチェン史上最悪の人物かもしれないラムザン・カディロフが、4月5日、ついに正式な(親ロシア派)チェチェン共和国大統領に就任した。昨年の10月に30歳の誕生日を迎えたばかりのカディロフは、これでプーチンから「ロシア連邦英雄章」に加えて、ロシア最年少の共和国大統領という最高位の権威を与えられたことになる。

さすがに父親のアフメッド・カディロフ元大統領が対独戦勝記念日のパレード観覧中に爆殺されただけあって、就任式がどこで行われるかということは直前まで機密扱いになっていた。けれども、というより、だからこそ、物々しいほどの厳戒態勢のもとで開催された式典と、式典を名目に進められたグローズヌイ再建プロジェクトには、6兆ルーブル(約27兆3300万円)ともいわれる意味不明の大金が国庫と亡父のカディロフ公的基金からつぎ込まれたという。

[プラハ・ウォッチドッグ 4/3]
http://www.watchdog.cz/?show=000000-000004-000001-000201&lang=1

就任式前日の4日、チェチェン内務省は、カディロフの父親を2004年5月に暗殺した「容疑者」を殺害したと発表した。捜査や裁判といった最低限の法的手続きさえ平然と無視し、ひたすら見せしめのためだけに行われた蛮行。けれども、それに対してカディロフが公式の場で述べた言葉は、「(部下たちからの)贈り物に満足している」というものだった[産経新聞 4/6]。死を贈られる権力に陶酔した人間が、いま、チェチェンの大統領になった。そして、彼の権力と、彼の権力によって生み出される多数の人々の死を、クレムリンが支えている。

●ラムザン・カディロフとは誰か?

ラムザン・カディロフとは誰か?暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤなら、この質問に対して、こう答えたかもしれない。彼は「私たちの時代のスターリン」である、と。まずは、チェチェン総合情報の人物情報を引用してみよう。

ラムザン・カディロフ
Kadyrov, Ramzan

(1976−) 少尉。親ロシア派私兵集団の長。チェチェン共和国政府(親ロシア派)第一副首相 を経て、チェチェン共和国政府(親ロシア派)大統領に就任(07年3月〜) 。ツェントロイ村に生まれ、地元の学校を経てダゲスタンの実業学校に進む。96年から父親のアフメド・カディロフ(元親ロシア派大統領)のボディガードを務めた。A.カディロフが親ロシア派政府の首班となって以来、大統領警護隊長となって、数々の掃討作戦にも加わった。04年5月9日にA.カディロフが爆殺されたあと、10日にロシア政府により第一副首相に任命された。04年10月、ロシア南部連邦管区大統領代表の顧問になった。アムネスティ・インターナショナルを初めとする複数の人権団体は、ラムザンが「カディロフツィ(カディロフ一派)」と呼ばれる私兵集団を率いて、チェチェン各地で、同じチェチェン人に対する営利誘拐と略奪を繰り返していることを批判している。数々の「献身的」な働きをたたえて、ロシアのプーチン大統領は04年12月に最高位の勲章、ロシア連邦英雄章を与えた。

アムネスティ発表国際ニュース/チェチェンとイングーシの状況は悪化している。失踪、強かん、拷問、超法規的処刑の新たな証拠
http://chechennews.org/archives/pr20040507amnesty.htm

ドイツの人権団体「脅威を受けている人々のための協会」(Society for Threatened Peoples)によると、ラムザン・カディロフは市民に対する拷問に直接個人的に関与している「戦争犯罪人」であり、近年チェチェンで起こっている殺人や拷問、強姦、誘拐といった犯罪の70%はカディロフの私兵である「カディロフツィ」によるものであるという。

ロシアの人権団体「メモリアル」も、「我々が入手した証拠を見る限り、現在チェチェンで行われている犯罪のほとんどがカディロフツィによるものであることは間違いない」と述べているし、国際人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書「チェチェン共和国:はびこる拷問」では、カディロフツィが、独立派戦士やその支持者を捕えるという名目で、一般市民に対する違法な拘留や組織的な拷問、虐待を繰り返している実態が明らかにされている。

「チェチェン共和国:はびこる拷問」
http://chechennews.org/dl/HRW_20061116_ja.pdf

一般市民に対する違法な拘留や組織的な拷問や虐待は、チェチェン全土に設置された超法規的な収容施設で行われることが多いが、国際ヘルシンキ人権連盟は、そうした収容施設の大半はカディロフツィによって運営されていると指摘する。カディロフの出身地、ツェントロイ村にも少なくとも二つの違法な収容所があり、そのうち一つは彼の自宅のすぐ側にあるという。

"Unofficial Places of Detention in the Chechen Republic"
http://www.ihf-hr.org/viewbinary/viewdocument.php?download=1&doc_id=6810

●私たちの時代のスターリン

カディロフ自身が関与したとされる誘拐事件の裁判の証人になっていたのが、プーチン大統領の誕生日に暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤだった。カディロフがまがりなりにもチェチェンの復興に貢献している以上、そうした人権侵害をやむをえない代償として割り切ることはできないかという質問に、彼女は毅然としてこう切り返している。

「ここでぜひ申し上げたいことは、それらを『特殊』な出来事だと言ってしまえるのは、被害者が私たちの愛する人―息子や兄弟、夫―ではないからだということです・・・それがごく一部の人に降りかかるものだからといって、その悲惨さが薄れるはずはありません。当事者にとって、『一部』などという割合には何の意味もないのですから」

「私たちの時代のスターリン」 [バイナフ自由通信 06/10/10]
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20061010

まして、ポリトコフスカヤは、チェチェン「復興」の裏事情を知っていた。彼女の最後のインタビューのひとつに、「カディロフはチェチェンの大統領にはなれない」という記事がある。そこで告発されているのは、チェチェンの建設ラッシュを利用して、カディロフがチェチェン人やロシア連邦政府から金を巻き上げているカラクリである。

アンナ最後のインタビュー記事 「カディロフはチェチェンの大統領にはなれない」(抜粋) [バイナフ自由通信 06/10/09]
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20061009/1160344184

ポリトコフスカヤの予想に反して、カディロフはプーチンからチェチェン共和国大統領に任命してもらうことができた。けれども、彼女の予想の根拠となっていた前提は崩れ去ったわけではなく、むしろ彼が大統領になったことで、より顕在化してくるのではないだろうか。

カディロフは確かに私たちの時代のスターリンなのだろう。彼は、ロシアとチェチェンという圧倒的な非対称関係のもとで造り出された独裁者であり、したがってクレムリンが用済みと判断すれば即座に始末される狂犬のようなものだ。何度確認してもよいことだが、カディロフがチェチェンで権力をもてあそぶことができるのは、彼が民衆に支持されているからではなく、それがプーチンの同意あるいは妥協にもとづく限りにおいてである。

●歴史はR・カディロフをどう語るか

カディロフの大統領就任式の会場が直前まで機密にされていたという記事を読んだとき、私はふと以前世界史の授業で教わったスターリンの最期を思い出した。他人を粛清しすぎて暗殺の恐怖に怯えていたスターリンは、同じ形の寝室をいくつも作らせて、就寝直前になるまでどの部屋で眠るかを決めなかったという。寝室は基本的に内側からしか開けられない構造になっていたため、スターリンはそこで誰にも邪魔されることなく粛清者のリストを量産することができた。ある夜、彼が寝室で脳卒中を起こして、誰にも助けを求められなくなる瞬間が訪れるまで。

ラムザン・カディロフがどのような最期を迎えるのか、そして歴史が彼をどう評価するかは、未来の世代が知ることになるだろう。私たちにできるのは、カディロフやプーチンと同時代に生まれ、チェチェン問題を知ってしまった者の責任として、チェチェンを見つめ、彼らを監視し続けることだと思う。歴史がカディロフやプーチンをどう語るかということは、今の私たちがチェチェンやロシア、そして日本や世界をどう語っていくかということと決して無関係ではないのだから。

追記:どうかよろしければ、以下の葉書またはファックスをプリントアウトして、ロシア大使館に送ってください。チェチェンで起こっていることを知っていると伝える続けることが、いつか戦争を終わらせるための大きな力になると思います。

葉書: http://chechennews.org/dl/20070409post_putin.pdf (65KB)

ファックス: http://chechennews.org/dl/20070409fax_putin.pdf (128KB)

■ブックレット:『お隣のメルヴェちゃん −クルド人難民家族との出会い−』

ブックレット

クルド難民関連ブックレット、『お隣のメルヴェちゃん −クルド人難民家族との出会い−』通信販売のお知らせです。「周香織・ねもとよしみ 二人展『おわりとはじまり』」 に行きそびれてしまったという方はぜひこちらでお求めください。

日常と非日常が交差する物語を通じて、クルド難民をめぐる日本の状況と、彼らと向き合う周さんの気持ちがストレートに伝わってくる一冊です。どこか懐かしい感じのする、ねもとさんの挿絵つき。クルド難民ってそもそも何?という方にも読んでいただきたいと思います。価格は800円です。

お申込みは shu_books(a)yahoo.co.jp まで((a)を@に置き換えてください)。お名前、発送先、部数をお知らせください。東京都新宿区の模索舎でも販売中です。

模索舎 http://www.mosakusha.com/

目次:

はじめに
クルドの家族の紹介
2004年7月 出会い
戸惑い
おにぎりと日本人サポーター
秋葉原で難民に出会う
2004年9月1日「メリエムさん出頭」
サフィエさんとメルヴェの来訪
座り込みの終わり
座り込み最後の日
フォトジャーナリズム雑誌「DAYS JAPAN」
広河隆一さん
泊り込みの取材
ひらがなの練習
撮り直し
掲載へ
2004年終わりから2006年にかけて
子どもは遊んでもらいたくて仕方ない
希望の眼差し
おわりに
支援のお願い

くわしく読む
http://homepage3.nifty.com/kds/kds_047.htm

■イベント情報

過去二十数年間にわたって隠蔽されてきた数百件もの原子力発電所のトラブルが、いい加減バレ出してきている今日この頃ですが、そうした中で、青森県・六ヶ所村の再処理工場は夏にも操業を開始しようとしています。再処理工場から排出される放射能は、1日で平均的な原子力発電所の1年間分の量を超えてしまうそうです。

4月14日(土)、東京・文京区で、映画『六ヶ所村ラプソディ』の上映とトークが行われます。身近なこと、命のこと、未来のこと、みんなで考えていきましょう。どうぞお誘い合わせの上ご参加ください。

まだ少し先になりますが、『踊れ、グローズヌイ!』の上映会が各地で開催されます。ご都合のつく方はぜひどうぞ。国内の状況がかなりよろしくなくなってきたので、その関連のイベントもお勧めです。

●4/25 東京: 映画『踊れ、グローズヌイ!』
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1041

●5/4 東京: メイシネマ祭’07(『踊れ、グローズヌイ』上映あり)
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070409/1176098337

●5/20 長野: :『踊れ、グローズヌイ』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070409/1176098336

●4/11 東京: 沖縄戦緊急学習会−ビデオ証言で学ぶ「集団自決」と教科書削除問題−
http://www.syuppan.net/

●4/12 東京: STOP!憲法改正手続き法案4.12大集会
http://www.annie.ne.jp/~kenpou/meeting/meet36.html

●4/14と5/13 東京: 地球のなかま映画祭2007
http://momotomonet.seesaa.net/article/34594178.html

●4/17 東京: STOP ! 改憲手続き法 4・17国会へ行こうアクション
http://www.annie.ne.jp/~kenpou/meeting/meet35.html

●4/21 東京: チェルノブイリ21周年救援 講演&コンサート
http://www.tokyo-art.info/work.htm#chernovyl

●4/27 東京: 新しいアチェを目指して―和平・アチェ行政法・地方首長選挙
http://www.nindja.com/modules/eguide/event.php?eid=2

■長期間のイベント情報

●12/1- 東京ほか: みえない雲
http://www.mienaikumo.jp/

●1/27- 東京ほか: グアンタナモ、僕達が見た真実
http://www.guantanamo.jp/

●3/10- 東京: パラダイス・ナウ
http://www.uplink.co.jp/paradisenow/

●4/5-9, 18-20 東京: 写真展「核の傷跡」
http://homepage2.nifty.com/chernobyl_children/index.html

●5/29-11/10 東京ほか: DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 「地球の上に生きる2007」
http://www.daysjapan.net/news/news2007/news200703_01.html


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▼ 編集人:邦枝律 発行人:大富亮