チェチェン総合情報
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チェチェンニュース Vol.07 No.16 2007.06.16

http://chechennews.org/chn/0716.htm (HTML版) 発行部数:1652部

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日本のメディアは、どうチェチェン問題に関わることができるのでしょうか。あるいは、すでにどのように関わっているのでしょうか。愛知立てこもり事件にすら登場する「チェチェン」の扱いについて、メディア問題を専攻している藤沢さんの考察を掲載します。

チェチェンの現地情勢については、ロシアの人権団体「メモリアル」による声明文を掲載します。最近チェチェンの傀儡政府が、各NGOを招いて会議を開いたようなのですが、席上ラムザン・カディロフ大統領(親ロシア派)が人権団体に対してキレたようです。どうも父親のアフメッド・カディロフを記念する基金のためにいわば「かつ上げ」同然のことをしていたのを批判されて気に召さなかった模様。

しかしそのての話はポリトコフスカヤのだいぶ前のレポートにも散見されるので、たぶん事実ではないかと思います。声明文でメモリアルが反論しています。話題のつきないポリトコフスカヤですが、遺作が6月末にNHK出版から刊行されます。ぜひお買い上げください。

イベントのお知らせもあります。チェチェンを題材にした映画「踊れ、グローズヌイ!」が、各地で上映されています。映画館ではなく、どこでも1日限りの上映なのですが、ぜひお近くで機会があればご覧下さい。明日17日には京都で、24日には茨城で、7月1日には大阪で上映があります。末尾のイベント情報をどうぞ。(京都上映には参加したかったのですが、諸般の事情でできなくなりました。みなさんすみません)

他方面の話題ですが、チェチェンニュースでも伝えてきたクルド難民、ドーガン家のみなさんが、カナダへ出国することになりました。記者会見が18日月曜にありますので、報道関係者の方はご参加ください。(大富亮/チェチェンニュース)

INDEX

■ロシア軍ヘリ墜落・阪神支局襲撃・愛知立てこもり事件におけるチェチェン問題の想起

(藤沢和泉/チェチェンニュース)

●「ロシア空軍ヘリ墜落事件」

4 月末から5月末までの一カ月間、日本のマスコミによるチェチェン関連報道を見てみると、まずは4月27日にチェチェン領内で起こったロシア空軍ヘリの墜落事件記事を見つけることができる。

といっても、これはいくつかの新聞に小さな記事が掲載されたのみで、どれだけ多くの人がこの事件でチェチェン問題を意識したのか疑わしい。もちろん、チェチェン問題の記事が少ないこと自体を今更ここで声を大にして言うつもりはない。何か大きな突発的事件が起こった時しかチェチェンが注目されないのは、今に始まったことではないからだ。日々の死傷者数を詳細にリポートされるイラク戦争とは扱いが違うのである。ただ、突発的事件だけでなく、チェチェンの日々の生活の中にも事件性は深く根を張っていることを忘れるべきではない。「日常」と呼ばれる生活空間の中に、悲劇と落胆、そして過去のものとして整理できない記憶の数々が混在している。

●「不屈であること 阪神支局襲撃事件、あすで20年」

 

ところで、この期間の新聞報道を追っていると意外な場所でチェチェンの名を目にすることができた。ひとつは、5月2日の朝日新聞(朝刊)に掲載された、「不屈であること 阪神支局襲撃事件、あすで20年 江川昭子さんと対談」という記事である。本記事は、朝日新聞阪神支局が散弾銃を持った男に銃撃され、2人の記者が死傷した20年前の事件について、朝日新聞論説副主幹の臼井敏男氏とジャーナリストの江川昭子氏が「報道の自由」の観点から対談したもので、言論に対する暴力の問題性を語られている。そこで、2006年 10月に殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤ事件が江川氏によって言及されており、「チェチェン紛争でのロシア当局による過剰な武力行使やプーチン政権の腐敗を批判した女性ジャーナリスト」として説明が付されているのである。

 近年、日本でも数々の言論に対する暴力事件が発生しており、ポリトコフスカヤの事件は私たち自身の生活にも密接にかかわる問題であろう。対談によれば、最近は気に入らない報道や何らかの主張を封殺するためには、その発言を行った人間自身によりも、その人間の自宅や家族に対して暴力が加えられることが多いという。家族を脅した方が効果があるというあまりにも卑劣な手段である。例えば、暴力団関連の記事を書いたフリージャーナリストの溝口敦氏の息子が路上で刺されたり、加藤紘一議員の実家が右翼の男性に放火されたりなどという事件がそれだ。

社会的問題を真摯に告発しようとする人間が攻撃の対象になり、そんなことをしない方が安全でいられる現実がある限り、多様な言論はますます暴力的に封殺されてしまうだろう。私たちは、ジャーナリストをはじめとして、社会的問題を意識的に告発していこうとする個人や集団を励まし、協力し、また自ら可能な限り行動を起こすことが必要である。対談中で江川氏が述べているように、「良い記事と思ったときは「よかったぞ」という声を上げ」ること、関心を持っているという意思表示を行うことだけでも大きなことなのだ。命をかけて闘っているジャーナリストの存在が、権力の愛犬になっているその他のジャーナリストによってかき消されることがあってはならない。

●「愛知・立てこもり事件」

 

もうひとつチェチェンの名を含んでいた記事は、同じく朝日新聞の5月19日朝刊で、「(時時刻刻)特殊班、持久戦も手段 愛知・立てこもり事件」という記事である。この事件は、愛知県の長久手町で銃を持った男が立てこもり、SATの林一歩巡査部長を死に追いやった事件として私たちの記憶に新しい。なぜここでチェチェンの名が現れるかといえば、「近年の主な立てこもり事件」として2002年のモスクワ劇場占拠事件と2004年北オセチア学校占拠事件が記述されているからである。もちろん、その歴史的背景を無視して愛知の事件とそれらの占拠事件を同列に扱ってしまうことは適切ではない。

そのことを指摘した上で言えば、国内の事件とチェチェンやその他の外国で起きた事件を結び付けて考えるこの視点は非常に重要であると思われる。チェチェンの場合は、それまで長年にわたってチェチェン人が虐殺されてきたという歴史があり、またチェチェンニュースでも折に触れて指摘してきたように、ロシア特務機関が事件に関与した疑いは完全に消え去ったわけではない。しかし、ここで問うてみたいのは人質や近隣住民の恐怖と、罪のない人間の悲劇的な死についてである。愛知の事件を少なからぬ日本人が痛ましい事件だと感じたはずだが、その悲しみをロシアや北オセチア、もしくはチェチェンという土地で過去に起きた事件と重ね合わせることで、私たちの悲しみは時間と空間を越えて、共有はできないものの少し近づくことはできるのではないか。

●チェチェンを想起すること

 以上に挙げたどちらの記事も、日本の事件とチェチェン問題をある視点で繋いでわずかに言及しただけである。しかし、チェチェン関連のニュースがこれだけ少ない中で、自らの社会に起こった事件と結び付けてチェチェンを想起すること、意識することが大変貴重な思想的実践であることは言うまでもない。これまでチェチェンニュースでも日本とロシア両国政府の強権化を憂慮してきたが、他者の置かれた悲劇的現状をいかにして自らの問題として捉えることができるか、いかにして私たちは主体的に関わっていけるのか、これこそが今度も考えていかなければならない問題であり、メディアに求められる報道の在り方であろう。

■アンナ・ポリトコフスカヤの新刊発売!「ロシアン・ダイアリー 〜暗殺された女性記者の取材手帳」

「楽観的な予測を喜ぶ力のある人は、そうすればいい。そのほうが楽だから。でもそれは、自分の孫への死刑宣告になる」。プーチンロシア大統領の政策を批判し、テロによる被害者の声を伝え、国民の政治への無関心に警告を発し続けた著者は、2006年10月、凶弾に倒れた。世界中がその死を惜しんだ記者の遺作。

昨年暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤの新刊が、6月28日に発売されます。まだNHK出版のサイトには上がっていないのですが、オンライン書店では予約可能のようです。ぜひお買い求め下さい。

http://item.rakuten.co.jp/book/4409622

■「メモリアル」声明文―チェチェンにおける活動について―

http://www.memo.ru/2007/06/08/0806071.html

2007年5月31日

2007年5月30日(水)、チェチェン共和国大統領ラムザン・カディーロフは、グデルメス地区の市役所で複数の人権団体の代表と会見を行った。

会議には約30名が参加し、議題として、地方山岳部の開発や、治安当局者に誘拐された人々の捜索の組織化、グローズヌイにおける無認可の建設の中止といった問題が取り上げられた。

会議中にラムザン・カディーロフは人権センター「メモリアル」を激しく批判した。「メモリアル」は――カディーロフいわく――根も葉もない噂を広げて、共和国政府の信頼を貶めようとしているだけだというのである。

とりわけ、カディーロフの糾弾は、アフメッド・カディーロフ基金のために強制的に寄付金が集められているという情報に関するものだった。

事実、「メモリアル」には、アフメッド・カディーロフ基金の被害者数名から証言が寄せられている。特筆すべきものしては、グローズヌイの消防士が、契約の更新と引き替えに「基金に」莫大な金額を寄付するよう上司から圧力をかけられたという事例がある。この情報は事実であることがすでに確認されている。当時、「メモリアル」は消防士の申し立てをラムザン・カディーロフに転送し、その結果、カディーロフは[事件が]チェチェン共和国の異常事態であるとして副大統領を解任し、その後、演説の中で事件に触れてさえいるのである。

であれば、なぜ今さら「メモリアル」が批判されなければならないのだろうか?

「共和国政府の信用を貶め・・・もっぱら否定的な状況説明をしようとすること」という[カディーロフの]主張はいったい何なのか?「メモリアル」がチェチェンにおける良い変化――近年における誘拐事件の急激な減少など――についても言及していることを考えると、この批判は急速に説得力を失ってくる。

要するに、「メモリアル」こそが、チェチェン共和国の状況を不安定化させようとしているという根も葉もない中傷をされているのである。

 「メモリアル」は設立当初から共和国の住民に対して法的支援を行い、戦争犯罪に関する情報――チェチェンにおける「掃討作戦」、「失踪」、拷問、超法規的収容所、刑事事件のでっちあげなど――を収集・公表してきた。

こうした情報源によって形成される全体像は、検察庁によって提供される統計によるものと比べて正確さに欠けるものかもしれないが、[状況が]婉曲化されていないという利点がある。法的基盤の上に再建可能なものが平和な市民生活と安定性のみである以上、「メモリアル」の仕事は人権侵害を止め、侵害された権利を回復することである。

人権センター「メモリアル」は、将来に渡って上記の原則を貫いていくものである。

人権センター「メモリアル」
Address: 127051 Russia, Moscow, Malyi Karetniy Per., Nr. 12
Tel: (495) 225-31-18

■最近の報道拾い読み

●5月3日は「報道の自由の日」(でした)

5月3日は「世界 報道の自由の日」。97年から設けられているユネスコ報道の自由賞に、アンナ・ポリトコフスカヤが選ばれた。本来活動中のジャーナリストを対象にしたこの賞なので、故人のアンナが選ばれたのは異例。

松浦晃一郎ユネスコ事務局長は、「行事を毎年行なってきて、ひとつさびしく思うのは、約200人のジャーナリストが様様なテーマについて激論を交わしている中に、日本人を見かけないことだ。「報道の自由の日」についての日本での報道にも接したことがない。...日本の人たちにも問題意識を持っていただきたい」と言います。

また、同じ日の朝日新聞には、20年前に兵庫県で発生した、朝日新聞阪神支局襲撃事件をめぐる対談記事が掲載されました。この件は、最初の記事で藤沢さんが取り上げたとおりです。

●射殺の女性ジャーナリスト遺作集を出版 露「言論封殺」に強まる懸念

昨年10月に暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤの遺作集「何のために」の出版記者会見が、30日にモスクワ市内で開かれた。「ロシアでは1993年以来、289人のジャーナリストが殺害されたり行方不明になったりしており、大半が未解決という」。著作集「何のために」には、ポリトコフスカヤが生前にノーヴァヤ・ガゼータに寄稿した記事や評論のほか、元同僚や親族が整理した未完の原稿や生前の写真も収録されている。[産経新聞 5/31]

http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070531/wld070531010.htm

●記者殺害事件「真実究明を」ゴルバチョフ氏

来日中のミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は記者会見で、昨年、チェチェン問題でプーチン政権を批判していたロシア人女性記者が殺害された問題では、「90年代も多くのジャーナリストが殺害されたが、真相は究明されないままだ。治安機関はしっかり捜査しなければならない」と指摘した。 [朝日新聞 6/12]

http://www.asahi.com/international/update/0612/TKY200706120379.html

●カシヤノフ前首相、大統領選に出馬表明

2日、ロシアの野党・人民民主同盟党首、カシヤノフ前首相が、来年3月の大統領選への出馬を正式に表明した。カシヤノフ前首相は、4月にモスクワで行われた「もうひとつのロシア」のデモの中心人物の一人。プーチン政権下で「自由と市民の権利への攻撃が行われている」ことを非難し、現体制の打倒を呼びかけている。[時事通信 6/2]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070602-00000130-jij-int

●露軍の死者 6割が自殺

ロシア国防省によると、2007年1月以降の露軍兵士の死者は139人で、そのうち6割にあたる86人が自殺だった。発表によると、29人がチェチェンでの戦闘で、3人が兵器の操作ミスで、9人が交通事故で、5人が軍隊内での虐待によって死亡したという。自殺についての詳しい理由は明らかにされていない。 [読売新聞 6/5]

■イベント情報

● 6/17 京都:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
チェチェン関連映画『踊れ、グローズヌイ!』 ぼくたちは「テロリスト」じゃない。世界に伝えるため、子どもたちは踊る。
http://0000000000.net/p-navi/info/info/200705220102.htm

● 6/24 茨城: 世界の現在を映すドキュメンタリー(『踊れ、グローズヌイ!』上映)
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070519/1179586537

● 7/1 大阪:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070418/1176870879

● 6/16 東京:「戦争がはじまる」帰って来た伝説の報道写真家 福島菊次郎「遺言」講演会
反戦をつらぬいた伝説の写真家。若者必聴の講演会。
http://www.jvja.net/fukusima%5Econtents.html

● 6/17 東京: 日本の難民を考えよう! 難民EXPO'07 〜日本の難民とその支援を知る日〜
難民達はどんな思いで祖国を離れたのか、日本でどのように暮らしているのか?
http://gyaku.jp/index.php?cmd=contentview&pid=000227

● 6/18 東京: ドーガンさんカナダ出国記者会見
クルド難民・ドーガンさん一家が、無事カナダに出国されることになりました。
http://homepage3.nifty.com/kds/

● 6/22 各地: 動けば変わる! TEAM GOGO 2007
エコな内容の号外を豪快にばらまきます。協力者募集中!
http://www.teamgogo.net/

● 6/24 東京: チッタゴン・ヒルこども基金・映画「コルノフリの涙」上映など
バングラデシュ・チッタゴン丘陵での人権抑圧や子どもたちへの支援について。お食事会も。
http://cht-children.org/modules/news/article.php?storyid=42

● 7/6,8 東京,大阪:ムリヤっちゅうてんねん! -インドネシアへの原発輸出を考える集い
インドネシアへの原発輸出を考えよう
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070607/1181245372

● 7/7-8 東京:東京平和映画祭
どうすれば戦争でない方法を選び取れるのか?問い続けるための映画祭。
http://www.peacefilm.net/

■長期間のイベント情報

● 3/10- 東京ほか: 映画「パラダイス・ナウ」
なぜ、彼らはそうしたのか。自爆攻撃を指令されたパレスチナの若者の48時間
http://www.uplink.co.jp/paradisenow/

● 5/26- 東京: 映画「ひめゆり」
何度も劇映画になった「ひめゆり」。これは歴史を託されたドキュメンタリー。
http://www.himeyuri.info/index.html

● 5/28-7/1 東京: 広河隆一・山本宗補写真展
アフガン、パレスチナ、チェルノブイリ、そして、日本列島老いの風景。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070521/1179759793

● 5/29-11/10 東京ほか: DAYS JAPAN写真展2007
http://www.daysjapan.net/event/bn/2007/event070502.html


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