チェチェン総合情報
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チェチェンニュース Vol.07 No.17 2007.06.22

http://chechennews.org/chn/0717.htm (HTML版) 発行部数:1647部

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■編集室より:

東京はようやく梅雨らしいおしめりです。みなさんいかがお過ごしでしょうか?

またチェチェンニュースをお届けします。今回は、チェチェンと同じく独立の機運のあった、タタールスタン共和国とロシアの、権限分割条約案をめぐってのやりとりと、それがチェチェンに与える影響について、今西 昌幸さんに解説していただきました。今西さんは、チェチェンの二つの憲法、独立期のものと、現在の親ロシア派によるものを全訳(!)しています。

それから、いまならまだ遅くないので、報道に関わる人すべてにお願いがあります。二つめの記事ですが、欧州人権裁判所が、チェチェン人活動家の殺害事件で、ロシア政府に賠償金支払命令を出しました。事実上の有罪判決です。貴重な結果なので、ぜひ各紙面で取り上げてください。元記事は英紙インディペンデントで、リンクを貼り付けてあります。

さて、ロシアではとどまるところのない民主化の後退のあおりで、政権にとって都合の悪いNGOがつぶされていきます。すでに5年以上、チェチェンでの人権監視にあたってきたロシアのNGO、「ロシア・チェチェン友好協会」が、「民族間の憎悪を煽った」として不当に多額な罰金支払いを要求されています。政権側の論理構成の粗雑さも注目ものですが、こうした動きを世界が無視・・・知っていて放置しているかぎり、状況は変りません。どうか、どなたか報道してください。それだけでもだいぶ違います。

ところで産経新聞に、プーチン大統領が、栄えある「言論の自由抑圧賞」を受賞したという記事がありました。ぜひロシア・チェチェン友好協会の件もお願いします。(大富亮/チェチェンニュース)

[追記 6/23]: 下記のチェチェンニュースには掲載できなかった情報を2点、追加します。

1)欧州人権裁判所でロシアに有罪判決が下った記事と、他方面の情報ですが、チェチェンニュースでも取り上げてきた、2)クルド難民のドーガンさん一家に、カナダへの出国許可と、在留特別許可が下りたニュースです。署名などにご協力くださった皆様、ありがとうございました。(大富)

チェチェンニュース Vol.07 No.17 2007.06.22 【重要な追加記事】

INDEX

■ロシアはチェチェンを二度騙した
−ロシア−チェチェン権限分割条約案をめぐって−

(今西昌幸)

 ロシアはチェチェンに対し数々の悪事をはたらいていますが、国家レベルの公約を二度破棄しました。その関連事項は次の通りです。

(1)第一次チェチェン侵攻

 ソ連崩壊後、旧ロシア共和国はかっての領域内の全ての自治共和国と自治州のうちの幾つかを格上げして共和国としそれを束ねて連邦制の国家体制を作る事にしました。各自治共和国はロシアと連邦条約の調印をしてその傘下に入る事となりました。

 しかしながらタタールスタン共和国とチェチェン・イングーシ共和国(イングーシは後に分離して調印)は連邦条約の調印を拒否し現在に至っています。現時点においては両共和国ともロシア連邦の構成主体となっていますが、法律的には両国ともロシア連邦と権限分割条約(主権条約)を結ぶ必要があります。タタールスタンは93年に条約を結びましたが、チェチェンは拒否してロシアに攻め込まれました。

 この違いはタタールスタンとチェチェンの大統領の先見性の差によって説明される事が多いのですが、タタールスタンはモスクワに近いので軍事行動は取れなかったという事情もあります。チェチェンはロシアの外れの外れですからロシア側は始めから強圧的で、ソ連崩壊後間もない91年から小規模ながら軍隊をさしむけ始めました。別の観点からすれば、チェチェンもタタールスタンも石油を産出しますが、タタールスタンにはソ連時代から自動車産業や石油化学工業の大きな工場があり多数のロシア人が経営トップとして産業界を牛耳っていました。したがってロシアとの政治交渉の橋渡しの役も果たしたと思われます。

 チェチェンに対しロシアは94年12月に大規模に進攻を開始しました。この背景には当時のロシアの社会情勢が密接に係っています。つまりソ連崩壊後のロシアの経済は混乱を極め、エリツィン大統領の人気は下降する一方でした。そのためにチェチェンを悪者に仕立て上げて軍事力で制圧する事によって強いロシアを演出し、その功労者として人気を高めようとした訳です。しかしながら96年の選挙では一回で過半数が取れず、共産党のジュガノフ党首と決選投票で争い、第3位だったレベジ氏(後年暗殺された)を味方に引き込んでやっと大統領になれたような有様です。

(2)ハサブユルト合意と和平条約

 チェチェン側の抵抗にあってロシアの第1次侵攻は失敗し、ロシア国内の反戦世論の高まりもあって停戦せざるを得ない状況になりました。そのため96年に隣国のダゲスタン共和国のハサブユルト市において両者は停戦協定(ハサブユルト合意)を結びました。その翌年エリツィン大統領とマスハードフ大統領は和平条約に調印しました。

 これらの文書には2001年末までに、両国は国際法上の原則に則って両国の基本関係を決定する事、及び紛争の解決には武力を用いない事が明記されていました。マスハードフ大統領は欧米を行脚して各国の理解を求めていましたので、ロシア連邦に留まっても事実上の独立は得られるものと見られていました。

 ところがそうなると諸外国はチェチェン共和国の独立を承認するのは確実で場合によっては連邦構成共和国も承認すると共に自分も独立を志向するかもしれない、という考えがロシアで軍部を始めとする強硬派に支配的になって来ました。それを阻止するにはハサブユルト合意を無効にすることが不可欠でした。丁度その頃隣国ダゲスタンではイスラム過激派が台頭し共和国政府が管掌出来ない解放区を作ったりしていました。

 99年後半にはそのリーダーとチェチェンの武闘派(反マスハードフ派)が連携してダゲスタン解放区の拡大行動をとるようになりました。勿論ロシア側は武力鎮圧に乗り出しました。その直後モスクワで民間アパート連続爆破事件が起き多くの死傷者が出ました。就任したばかりのプーチン首相はこれはチェチェンの仕業だとして大規模なチェチェン侵攻を開始しました。

 毒殺されたリトビネンコ元KGB将校やイギリスに亡命しているベレゾフスキー氏はこの爆破事件はプーチンの自作自演という説を唱えています。その真偽を考えるヒントは同じ頃近くのリャザン市の民間アパートで高性能爆弾が仕掛けられているのを住民によって発見された際、ロシア政府は訓練用の砂糖の袋だったと発表していた事でしょう。とにかくハサブユルト合意は反故になりましたが、マスハードフ大統領は殺害されるまで和平交渉を提唱していました。

(3)傀儡政権の成立

 プーチン政権にとってチェチェン問題は解決すべき重要問題の一つです。年頭教書や重要記者会見の際には必ずコメントがあります。ロシアとしては建前は法治国家として振る舞っていますので、チェチェンの憲法とロシア連邦の憲法との間に矛盾があるので、占領下のチェチェンに自分の息のかかった人間(アフメド・カディロフ)を大統領に据えた上でオリジナル憲法を改訂させました。その承認の国民投票の前(03年3月)にプーチン大統領はテレビ演説をして「将来締結される権限区分条約(主権条約)において幅広い自治を与える」という約束をしました。つまり国民投票で否決されると言う事態を回避した訳です。

 そもそもオリジナル憲法と改訂憲法の主要な差異は主権と資源所有権にあります。つまりオリジナル憲法では第1条で自国を主権を持った民主的な法治国家であると規定しているのに対して、改訂憲法では主権の文字は消されて、ロシア連邦の管轄外の部分に限定的な主権を持つとされています。さらに領土と資源については「究極の権限」を持つとされていたものが、領土はロシア連邦領土の一部であると書き換えられました。資源についてはロシア連邦法の範囲内で利用出来ると書き換えられました。

 さきのプーチン大統領の公約に基いて、憲法改定後両国の関係者の間で権限区分条約の草案作りが開始されました。チェチェン側の要求は、主権の明文化、資源利用の自由化、特に石油販売利益の自主的処分権の明文化等でした。しかしながらこれらの案件はロシア側の合意を得られないまま現在に至りました。その間プーチン大統領は自らの権限の増大を図り各共和国の権限を弱体化する方策を執りました。

 その結果の一つは各共和国大統領の直接選挙制を無視してプーチン大統領の任命制にしました。実際に各地の共和国憲法では3選禁止であるのに実際は任命されて3期目を勤めている大統領も出てきました。逆にプーチンが気に入らない人物は大統領に任命されないようになりました。この流れを引き延ばせばプーチン自身の3選の可能性もあるという事になります(確実に権力を保持するには任期延長と言う隠し球がありました。億が一にも反対派が大統領になればプーチン自身が国家反逆罪に問われる事になります)。

 結論的にはロシアにとって「目の上のタンコブ」的なチェチェンのオリジナル憲法を改訂さえすれば、例え傀儡政権であろうとチェチェンの特権要求には耳を貸す必要はなくなりました。それでも、もっともらしい言い訳は準備しています。それは次のようなことです。

 チェチェンと同じく連邦条約に調印していないタタールスタン共和国との権限区分条約を改訂して国会に付託しました。プーチン与党が圧倒的多数を占めている下院は承認しましたが、各共和国及び各州の代表で構成されている上院は、タタールスタンだけに特権を認める事に反対しました。上院で反対された主な事項は次の各項目です。

 つまりプーチン政権は、タタールスタン側と共同して権限分割条約案作りを行い、ロシア下院でいったん通しましたが、上院ではそれに難癖をつけて却下しました。

 プーチン大統領はこれを奇貨として(実際はそのように仕向けたのですが)条約を未成立のまま放置しています。本当に成立させたければ、もう一度下院に差し戻せば、3分の2以上の賛成が得られるので成立は可能です。

 こういう絶大な権限があるのを楯にとって、プーチン政権はチェチェンとの権限区分条約の草案すら作りません。つまりチェチェンは、ハサブユルト合意を反故にされたのに続いて「幅広い自治を与える」という公約をも反故にされた訳です。

(今西昌幸)

資料:

■欧州人権裁判所、チェチェン人活動家の殺害でロシアに賠償金支払命令

英紙インディペンデントによると、6月21日、ヨーロッパ人権裁判所は、チェチェンの人権活動家を殺害したことで、ロシア当局に遺族への賠償金を支払うよう命じる判決を下しました。まだ新しいニュースなので、ぜひ報道関係の方は活用してください。

http://news.independent.co.uk/europe/article2692483.ece

■ロシア・チェチェン友好協会が苦境に!

アムネスティ・インターナショナルが、苦境にあるロシアのNGOを紹介しています! 以下サイトから引用。私たちも何か支援できないものでしょうか?

「当局からの圧力が強まる中、国際社会からの支持と支援がなければ、私たちはロシアで活動を続けることはできないでしょう」(RCFSスタッフ)。

ロシア-チェチェン友好協会(RCFS)が事務所閉鎖の命令を受けたのは、2006年10月でした。

RCFSはチェチェン共和国やその他の北コーカサス地方における人権侵害をウォッチし、毎日、強制的失踪やその他の人権侵害についてプレスリリースを出していました。また、紛争の被害を受けたチェチェンの市民のために、医療支援を組織したり、子どもたちのために休日の休戦を呼びかける活動を続けていました。

http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=1244

関連:新NGO法によりロシア・チェチェン友好協会に閉鎖命令: http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=214

■ロシア・チェチェン友好協会に事実上の破産宣告

 6月18日、ニジニ・ノブゴロド地方仲裁裁判所は、ロシア・チェチェン友好協会に対して、約88万ルーブル(約420万円)の支払いを命じる判決を下した。裁判は、ロシア・チェチェン友好協会が2002年から2004年にかけて行った特定の活動に対する寄付金をめぐって、税務査察局が100万 1561ルーブル(約480万円)の税金と罰金を課したことについて、協会が異議申し立てをして起こされていたもの。

 判決ではそのうち12万ルーブル(約57万円)について課税の不当性が認められたが、残りの約88万ルーブル(約420万円)については協会に支払いを命じている。元代表スタニスラフ・ドミトリエフスキーは、判決がロシア・チェチェン友好協会にとって事実上の破産宣告であると指摘する。税務署の主張によると、「過激組織」であるロシア・チェチェン友好協会は平和的活動と称して民族間の憎悪を煽るために寄付金を用いているため、同協会の基金には利潤税と罰金が適用されるべきだという。・・・まったくすばらしすぎる理屈。

 ドミトリエフスキーいわく、「税金も罰金も支払いようがありません。団体が非合法化されて資金も財産も残っていないのですから・・・」。[Caucasian Knot 6/20]

http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1189835.html

■ベスラン事件を知っていた人々

6月19日、ベスラン公式調査連合「プラブダ・ベスラナ」は、北オセチア共和国のベスランの警察官が2004年9月に公共施設で人質事件が起こることを事前に察知していたという調査結果を発表しました。ベスラン学校占拠事件については、「ロシア軍上層部の一部将官が関与」しており、「地元治安当局による学校警備などの怠慢がテロを招いた」というベスラン事件調査委員会の報告書がすでに提出されています。やはり…という感じですが。[Pravda Beslana 6/19]

http://www.pravdabeslana.ru/teletayp.htm

関連:ベスラン学校占拠事件報告書の不可解: http://chechennews.org/chn/0629.htm#beslan

■プーチン「言論の自由抑圧賞」を受賞!

16日、ドイツのジャーナリスト団体「調査ネットワーク」は、今年世界で最も言論の自由を抑圧した人物として、ロシアのプーチン大統領に「口の閉じた牡蠣賞」(「言論の自由抑圧賞」)を贈った。「南ドイツ新聞のヘリベアト・プラントル政治部長は同授賞に関し、『ロシアの“言論の自由”とは、プーチン氏が欲することを書く自由である』と指摘し、国家権力によるメディア弾圧を厳しく批判した」。ロシアではプーチン大統領が政権に就いて以来、少なくとも14人のジャーナリストが暗殺されている。[産経新聞 6/19]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070619-00000009-san-int

■イベント情報

チェチェン関連映画『踊れ、グローズヌイ!』 ぼくたちは「テロリスト」じゃない。世界に伝えるため、子どもたちは踊る。

● 6/24 茨城: 世界の現在を映すドキュメンタリー(『踊れ、グローズヌイ!』上映)
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070519/1179586537

● 7/1 大阪:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070418/1176870879

● 6/22 各地: 動けば変わる! TEAM GOGO 2007
エコな内容の号外を豪快にばらまきます。協力者募集中!
http://www.teamgogo.net/

● 6/24 東京: チッタゴン・ヒルこども基金・映画「コルノフリの涙」上映など
バングラデシュ・チッタゴン丘陵での人権抑圧や子どもたちへの支援について。お食事会も。
http://cht-children.org/modules/news/article.php?storyid=42

● 7/6,8 東京,大阪:ムリヤっちゅうてんねん! -インドネシアへの原発輸出を考える集い
インドネシアへの原発輸出を考えよう
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070607/1181245372

● 7/1 東京: ジュマ・ネット総会
バングラデシュ・チッタゴン丘陵での人権抑圧や子どもたちへの支援について。お食事会も。
http://daily.jummanet.org/?eid=458266

● 7/7-8 東京:東京平和映画祭
どうすれば戦争でない方法を選び取れるのか?問い続けるための映画祭。
http://www.peacefilm.net/

● 7/14 東京:ナガ・ピース・ネットワーク設立記念イベント
『ナガ』インド・ビルマ国境地域の山岳民族と独立運動、そして平和的解決を求めて。
http://nagas.sytes.net/%7Enpn/info.html

■長期間のイベント情報

● 3/10- 東京ほか: 映画「パラダイス・ナウ」
なぜ、彼らはそうしたのか。自爆攻撃を指令されたパレスチナの若者の48時間
http://www.uplink.co.jp/paradisenow/

● 5/26- 東京: 映画「ひめゆり」
何度も劇映画になった「ひめゆり」。これは歴史を託されたドキュメンタリー。
http://www.himeyuri.info/index.html

● 5/28-7/1 東京: 広河隆一・山本宗補写真展
アフガン、パレスチナ、チェルノブイリ、そして、日本列島老いの風景。
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070521/1179759793

● 6/24-7/8 各地: 映画『Women in Struggle -目線-』と監督パレスチナから来日ツアー
パレスチナの女性たちの闘いを描いたドキュメンタリーと、監督トークツアー
http://0000000000.net/p-navi/info/column/200706202356.htm


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